キレイに日焼けした小麦色の肌は健康的で憧れますが、肌へのダメージを考えると長時間直射日光を浴び続けることはオススメできる状況ではありません。
登山の時は、直射日光を浴びる機会が多くしっかりと対策しておかないと、一生体に残るような火傷になったり、重症になると命に関わる危ない状況になる危険性もあります。
ここでは、どのようにして日焼けになるのかその仕組みを説明した後、日焼けに対する予防策とアフターケアについて解説していきます。
日焼けになる仕組み
それでは、日焼けになる仕組みについて説明していきます。
まずは、日焼けを語る上で欠かせない紫外線について述べたあとに、その紫外線がどのように作用して日焼けになるのかという順で説明していきます。
紫外線
日光には紫外線というものが含まれます。
可視光線のうち波長が短い「紫色」よりももっと波長が短く、目に見えない部分の光線となります。
そして、紫外線の中でも波長によりA、B、Cの3つの光線に大別され、頭に紫外線を表すUVを付けて次のような名前で扱われています。
UV-A (315-400 nm)
大気による吸収をあまり受けずに地表に到達します。生物に与える影響はUV-Bと比較すると小さいものです。太陽からの日射にしめる割合は数%程度です。
UV-B (280-315 nm)
成層圏オゾンにより大部分が吸収され、残りが地表に到達します。生物に大きな影響を与えます。太陽からの日射にしめる割合は0.1%程度です。
UV-C (100-280 nm)
成層圏及びそれよりも上空のオゾンと酸素分子によって全て吸収され、地表には到達しません。
引用:気象庁HP「紫外線とは」
※nm(ナノメートル):波長を表す単位
このうち、UV-Bという紫外線が皮膚に大きなダメージを与え日焼けの症状を引き起こします。
因みに、UV-Aという紫外線については、UV-Bほどのダメージは無いものの、長期間浴び続けることでシワや弛みの原因となります。
UV-Cについては、地上まで到達するまえに消滅するので考慮する必要はありません。万が一、皮膚に浴びることになったとしても、神戸大学による2020年の研究により安全であることが実証されてます。
神戸大学大学院医学研究科内科系講座皮膚科学分野(錦織 千佳子教授、国定 充講師、山野 希 大学院生ら)と、ウシオ電機株式会社(東京本社)の研究グループは、高い殺菌力を持つ222nmの紫外線(UV-C)を反復照射しても、皮膚がんが発症しないことなどを世界で初めて実証し、ヒトの皮膚や眼にも安全であることを報告しました。
引用:神戸大学HP「皮膚がんなどの発症なし 222nm紫外線(UV-C)繰り返し照射の安全性を世界で初めて実証」
なお、これら紫外線は標高が1000m上昇するごとに10~12%増加します。そして、晴天の新雪の上になると照り返しにより80%の紫外線量がプラスされると言われていますので、山行の際、特に雪山山行ではしっかりと予防しておくほうが良いでしょう。
日焼けの仕組み
続いて、紫外線が与えるダメージが日焼けになる仕組みについて説明していきます。
前述のとおり、日焼けは紫外線のうちUV-Bを浴び続けることで発生します。
人間の皮膚は、紫外線が当たると血管を拡張させる作用をもったプロスタグランディンEという物質をつくります。この物質は、紫外線が真皮に届くことを防ぐ役割を持っていて、このことで紫外線が肌の奥まで到達して人体に悪影響を与えることを防いでいます。そして、この物質により血管が広がり、血液の量が増えることで皮膚が赤くなります。
また、プロステグランディンEはメラノサイトという肌色素の細胞に働きかけて、メラニンという褐色の色素をつくります。このメラニン色素が影響して肌の色が濃くなり、このことで紫外線から肌細胞を守る働きを行います。
このように、プロスタグランディンEという物質が作られることにより、肌が赤くなったり、褐色に色づいたりといった日焼けの症状が発生することとなります。
なお、この日焼けの症状はその状態によって「サンバーン」と「サンタン」という2つの種類で呼ばれてます。
サンバーン
紫外線を浴びることより、皮膚の表面組織が炎症(やけど)を起こすことをサンバーンと言います。
主な症状として、肌がヒリヒリして赤くなります。
サンタン
サンバーンを経て更に紫外線を浴びることでメラニン色素が働いて、肌が黒くなることをサンタンといいます。
いずれの状態も肌にダメージがあることには変わりありません。適切に対策を講じるのがよいでしょう。
日焼けによって生じる症状
日焼けの起こる仕組みが解ったところで、日焼けによって生じる症状について急性的なものと、慢性的なものに分けて説明します。関連事項として、紫外線が皮膚以外に与える症状についても述べてみます。
日焼けによって生じる急性的な症状
日焼けによって生じる急性的な症状としては、肌が赤くなって熱を持つというものがあります。そして、重症になると水ぶくれや皮が剥けるといった症状がでてきます。
前述したとおり、日焼けは炎症(やけど)です。
このため、症状もそうですが治療方法も火傷のそれに似ていて、基本的には患部を冷やすことで対応します。そして、重度な日焼けには内服薬や外用薬での対応が必要な場合もあります。
そして、日焼けは「日光皮膚炎」というしっかりとした病名をもった病気でもあります。
あまりにひどい症状であったり、長期症状が続く場合は無理をせずに皮膚科で診察を受けるようにしてください。
日焼けによって生じる慢性的な症状
日焼けによって生じる慢性的な症状としては、シミや皺、腫瘍ができるといったものがあります。これらは加齢による老化と見られる場合が多いですが、紫外線を浴び続けて生じる慢性的な症状な場合もあります。
このため、日常的にしっかりと日焼け予防を施すことで見た目の改善に役立つかもしれません。
また、日焼けの原因となるUV-Bという紫外線は、皮膚細胞のDNAを傷つけます。皮膚細胞はこれらの傷を修復する能力をもっていますが、傷の大きさや頻度の多さから修復間違いを起こして、皮膚がんの原因を作ると考えられてますので、更に日焼け予防はしっかりしたほうが良いでしょう。
紫外線が皮膚以外に与える症状
ここからは、紫外線が皮膚以外に与える症状について見ていきます。
具体的には眼球に対する症状となります。
眼球では、角膜や水晶体により多くの紫外線は吸収されて人体へ影響与えることは無いのですが、1~2%の割合でその奥にある網膜まで届いてしまい様々な症状を引き起こします。
有名なところでは次の3つの症状が起こります。
- 紫外線角膜炎
- 翼状片
- 白内障
紫外線角膜炎
紫外線角膜炎は、軽いものでは涙が出るといったものから、白目の充血やゴロゴロとした異物感と言った症状があります。重いと眼痛などにより目を開けていられないといったことも起きます。
雪山登山で起こる「雪目」はこの紫外線角膜炎にあたります。
治療方法としては主に自然治癒で、1~2日安静にしていることで回復可能ですが、雪山山行中に発生すると停滞を余儀なくされて、最悪撤退する羽目になるかもしれません。サングラスなどでしっかり対策しましょう。
翼状片
翼状片は、眼球が長く紫外線を浴び続けることで黒目(角膜)に白目(眼球結膜)が侵入する病気で、その計上が翼状になることからこのように呼ばれます。
症状としては視力障害が上げられます。
戸外で長年活動している人は発症のリスクがあるそうで、登山歴が伸びるにつれて発症のリスクが高まります。
治療方法は手術によって患部を切り取ることになりますが、2~7%は再発するようで、そうなると再手術が必要になってしまうようです。
白内障
白内障は、水晶体が濁ることで網膜への光が遮られて視力が低下するといった症状がでる病気になります。症状が進むと失明に至るので油断のならない病気でもあります。
加齢や喫煙など様々な要因で起こりえますが、其の一つに紫外線も含まれます。
治療方法は濁った水晶体を、手術により眼内レンズに差し替える方法になります。
登山のときの日焼け予防策
ここまで、日焼けがどのような仕組みで起こり、どのようなリスクを伴うかといった点が解ってきたかと思います。そして、できるだけ日焼けをしないことが大事だとご理解いただけたかと思います。
そこで、ここからは登山の時の日焼け予防策ということで、主な4つの対策についてを説明していきます。
日焼け止めで予防する
登山のときの日焼け予防策の1つ目は「日焼け止めで予防する」です。
これが、一番メジャーなやり方になります。コンビニやドラッグストアにはさまざまなタイプの日焼け止め薬を置いています。
大きなお店では、日焼け止めだけで1区画使っているところもあるくらい種類が豊富です。
これだけの量が出ていると、どんなものが登山で有効なのかちょっと悩んでしまうかと思いますが、
登山向きの日焼け止めについては次の2つを抑えておけば大丈夫です。
- SPF値が40以上を選ぶ
- ウォータープルーフ効果の有るものを選ぶ
SPF値が40以上のものを選ぶ
SPF値とは、紫外線UV-Bを防ぐ目安になる数値です。この数値が高い程紫外線をカットするための成分量が多いものとなります。ただし、成分量が多くなるほど肌への影響も増しますので、肌荒れになる可能性が出てきます。
これは体質に影響する部分なので、カット&トライを繰り返すしか無いですが、肌に影響が無い数値を見極めていくことになるかと思います。
塗り直しを前提にすればSPF40前後でも問題無いです。
ウォータープルーフ効果の有るものを選ぶ
ウォータープルーフ効果とは、水や汗で流れ落ちづらい効果を指します。
登山ではいっぱい汗がでますので、日焼け止めが流れ落ちやすいため、気が付かずに山行を続けていたら日焼けで酷い状態になるといったことが起こりえます。
このようなことが無いように、ウォータープルーフ効果を謳ったものを選んでください。
小物で予防する
登山のときの日焼け予防策の2つ目は「小物で予防する」です。
アウトドア用品の中には、日焼け防止のための小物が多数存在しています。
そのなかでも登山に持っていくのに適しているものについて5つ紹介していきます。
帽子
まずは帽子です。つばが大きいものほど日焼け防止には適していますが、大きすぎると視界が遮られる範囲も広くなります。
山行では、視界はなるべく広く確保しておく必要がありますので、適度な大きさのものを選ぶのが良いです。
また、稜線など開けた場所にでると突風に出くわすこともあります。風邪に飛ばされないよう紐などを付ける風対策も忘れずに施しましょう。
帽子については別記事でも解説しています。気になる片は次の記事もお読みいただければと思います。
サングラス
続いてはサングラスです。
前出のとおり、紫外線による眼球へのダメージも甘くみないほうが良いです。
このため、眼球へのダメージ防止ということでサングラスをかけることをおすすめします。
特に、新雪の雪山など、雪による照り返しの激しい場所では必須となりますので、1つ購入しておくと良いでしょう。
手袋
手袋をすることも日焼け対策の一環になります。
手の甲は衣類などで隠れることが無い部分なので日焼けになりやすく注意が必要です。
手を守ることと合わせて日焼け防止として山行の際には手袋をする習慣を持つことをおすすめします。
手袋については別記事でも解説しています。気になる方は次の記事もお読みいただければと思います。
フェイスマスク
コロナ禍の影響もあり、フェイスマスクをする人が増えていますが、飛沫防止のほかに顔の日焼け防止に使うこともできます。UVカット塗料を使っているものもありますので、そういったものをチョイスすれば高い効果が期待できます。
ただ、常時付けていると苦しくなってしまいますので、適時使うようにするのがよいです。
ネックゲイター
山行では、足元に注意が行きやすくうつむき加減で歩行することが多いです。
このため、首の後ろ側が日焼けしていることに気が付かないで、下山後入浴時に染みて酷いことになってたと気づく場面も多かったりします。
そんなときは、ネックゲイターを着用することで首元を直射日光から守るようにすると良いです。
これらネックゲイターもフェイスマスクとどうようにUVカット塗料を使っているものが多いですので、そういったものをチョイスするとよいでしょう。
わたしのオススメはBuffのネックゲイターです。別記事にまとめたものがありますので、気になる方は以下の記事もお読みいただければと思います。
衣類で予防する
登山のときの日焼け予防策の2つ目は「衣類で予防する」です。
登山は常時体を動かしているので、体に熱を帯びやすく半袖や半ズボンで活動することも多いかと思いますが、日焼け防止という観点からはあまりおすすめできません。
可能な限り、長袖、長ズボンを用いて肌の露出を抑えることが大事です。
山行用の衣類は、通気性や速乾性の高いウェアが多数存在していますので、そのようなウェアを選んで着用するとよいでしょう。
食事で予防する
体に取り入れる成分のなかにも日焼け防止に役立つものがあります。
有効な2つの成分と代表的な食材についてを取り上げてみます。
それぞれ、山行直前に食したからといって即効果が出るものではありませんので、普段の食事に適度に取り入れるとよいでしょう。
リコピンを含んだ食材
リコピンには強い抗酸化力があり、日焼けによる肌のダメージやシミを軽減する役割を持っていると言われています。
リコピンを含む代表的な食材にはトマトがあります。
トマトはパスタ料理、卵料理などにも良く合います。リコピン摂取をメインとした場合は、トマトジュースで摂取するという方法でも大丈夫です。
βカロチン
βカロチンにはシミの防止や目の健康に効果があると言われています。
βカロチンを含む代表的な食材には人参があります。
人参は、炒めものにも煮物にも何にでも合わせられますし、生のまま千切りにすることでサラダとしても食べられます。普段の食事に積極的に取り入れてみては如何でしょうか。
下山後のアフターケア
最後に、下山後のアフターケアについて3つの対策を紹介してから、この記事を終えようと思います。
日焼け後のアフターケアは72時間が勝負と言われていますので、下山後すぐに取り組むとよいでしょう。
肌を良く冷やす
下山後のアフターケアの1つ目は「肌を良く冷やす」です。
前述のとおり、日焼けは火傷しているのと同じですので、肌が赤くなってたりヒリヒリする状況だったら、濡れたタオルや低い温度のシャワーなどで肌を冷やしてあげることが大事です。
一日経っても症状が収まらないようでしたら、時間を見つけてなるべく冷やすようにするとよいでしょう。
水分を多く取る
下山後のアフターケアの2つ目は「水分を多く取る」です。
下山後は、肌自体も脱水状態に陥ってます。この状態のままにしておくと皮膚が乾燥してしまい肌の自己回復力が落ちてしまいますので、なるべく多めの水分を補給しておくことをおすすめします。
このとき、できれば常温の水が良いです。
下山後は、キンキンに冷えたビールとか堪らないですが、アルコールの摂取はむしろ脱水を進めてしまいますので、飲みすぎには注意しましょう。
そして、水を一緒にビタミン類のサプリも取ると更に効果的です。
保湿系スキンケアを使う
下山後のアフターケアの3つ目は「保湿系スキンケアを使う」です。
日焼けした肌には保湿が特に有効になります。
現在では、男性向けの保湿系スキンケアも出てきています。男性向けはサラッとしたものが多く使いやすいかと思いますので、高価なものでなくても取り入れることで、肌の劣化も防げて良いかと思います。
誰でも若く見られたいもの、こういうところから取り入れていってみては如何でしょうか。
まとめ
今回は、登山での日焼けを題材に説明してみました。
日焼けの原因となる紫外線は、街中よりも標高の高い山中のほうが強くなります。新雪を被った雪山では照り返しされた紫外線もプラスされてより強い光線を浴びることになります。
軽微な日焼けであれば自然治癒に任せることも可能ですが、重症になってくると医者への通院が必要になったり、長期ケアが必要になったりと面倒が増えてしまいます。加えて、肌状態が悪化することで見た目も老けてしまいます。
今回紹介した予防策やアフターケアを取り入れることで、日焼けしない快適な山行を目指してもらえたら幸いです。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
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