2022年9月10日は富士山閉山の日。
今季最後の登頂ということで、結構な数の人が山頂を目指す中、今回はちょっと経路の変わった場所に赴いてみました。
何年か前にインターネットで見たことがあったのですが、御殿場の登頂ルートを外れた獅子岩の足元に、乗り捨てられたワゴニアの残骸があるとのことで、その見学に行ってきました。
御殿場の砂地に埋もれて朽ち果てた車両の様子を眺めていると、いろいろな妄想を掻き立てられて、なかなか興味深いものがありました。
ただ、今回の場所は正規ルートを外れていることもあり、万人におすすめと言える場所ではありません。
その点、ご了承いただければ幸いです。
基本情報
まずは、今回の山行についての基本情報です。
日付:2022/9/10
天候:曇りのち晴れ
エリア:富士山エリア
コース概要:富士急バス「御殿場口新五合目停留所」〜ワゴニア〜御殿場旧二合八勺〜上双子山〜下双子山〜幕岩〜富士急バス「御殿場口新五合目停留所」
難易度:体力☆☆、技術☆、危険☆☆
交通機関:
(往)JR御殿場線「御殿場駅」から富士急バスで、「御殿場口新五合目停留所」へ
(帰)「御殿場口新五合目停留所」から富士急バスで、JR御殿場線「御殿場駅」へ
概要
御殿場ルート(ごてんばるーと)
御殿場ルートは、4つある富士山登頂ルートの中で歩行距離が一番長いルートです。
標高3,000mを超える七合目に至るまで、火山石の堆積した砂地が続くので、かなり体力を削られる中級者向けのルートとなっています。
その分、訪れる登山客は少なめでマイペースで静かな山行を楽しめるルートでもあります。
ただし、近年は登山口の観光地化も進んできて、御殿場新五合目は一般の観光客が増えてきているように感じます。
そのまま、観光客のためにバスの便が増えてくれると我々登山者も助かるので、その方向に進んでもらえるとよいのですが、今後、どのように変化していくか注視していきたいですね。
御殿場ルートを含めて、主要登頂ルート4つについては、次の記事にまとめています。詳細はそちらをご覧ください。
今回の山行上でのポイント
地図上の位置と標高
今回の山行で歩いた場所について、地図上の位置、標高です。
「Download file」のリンクからGPXデータとしてダウンロードできます。
ご自由にご活用ください。
最高点の標高: 2211 m
最低点の標高: 1408 m
累積標高(上り): 1295 m
累積標高(下り): -1295 m
総所要時間: 06:15:20
歩いた軌跡
続いては、GPSデータを元にした軌跡です。
市販の地図
今回の山行ルートが掲載されている市販の地図も載せておきます。
本来であれば、国土交通省国土地理院のサイトから2万5千分の1地形図を購入、印刷して持参するのが正しい在り方ですが、毎回それだと面倒なので、紙面の地図は5万分1の市販地図をザックに入れて持って行くことにしています。
わたしの山行でのメイン地図はGPSアプリに移っており、紙面地図は予備扱いなため、今のところこの運用で困った事態には陥っていません。
ただ、読図の勉強をちゃんとしたい場合は、2万5千分の1地形図を購入した方が良いです。
5万分の1の等高線は荒すぎて地形把握には、ほぼ役に立たないのでご注意くださいね。
おすすめ展望ポイント
今回の山行ルート上の展望ポイントは、次の通りです。
- ワゴニア周辺
- 下双子山山頂
ワゴニア周辺
今回の山行ルート上での展望ポイントの一つ目は「ワゴニア周辺」です。
この場所は、森林限界を越えているため、視界を遮るような樹林帯はありません。
このため、山頂方面への展望はもちろん、下界に対する展望も抜群の場所になっています。
北方面だけは「獅子岩」の高みに遮られて視界を確保できませんでしたが、十分に気持ちの良い展望を楽しむことができました。
その分、雲の中に入ってしまったりすると道迷いに繋がるリスクある場所でもあります。
立ち寄る際には、読図に熟練しておくか、GPS地図を携帯するかいずれか必須でお願いします。
ギャラリー
動画でぐるっと撮影してみました。こちらもついでに眺めてってください。
下双子山山頂
今回の山行ルート上での展望ポイントの二つ目は「下双子山山頂」です。
下双子山は御殿場新五合目から登山道の整備されている小高い二つの側火山の一つで、低い方の山頂になります。
高い方の上双子山には三角点とケルン(石積み)しかありませんが、こちらの山頂には、伊邪那岐命(イザナギノミコト)と伊邪那美命(イザナミノミコト)を祭った石碑と小さな鳥居が立っています。
ここから、北方面には山中湖、東方面には御殿場や箱根の山々、南方面には駿河湾や愛鷹山塊、西方面には富士山山頂や宝永山などが楽しめます。
本来は標高がより高い上双子山の方が展望が良さそうでしたが、通過の際に雲の中に入ってしまったので、今回は展望を拝めたこちら側を上げさせてもらいました。
ギャラリー
注意した方が良さそうな区間
今回の山行ルート上で、注意したほうがよさそうな区間は次の通りです。
- ワゴニアから御殿場正規ルートへのトラバース区間
- 幕岩へ降る区間
ワゴニアから御殿場正規ルートへのトラバース区間
今回の山行ルート上の注意した方が良い区間の一つ目は「ワゴニアから御殿場正規ルートへのトラバース区間」になります。
注意といいますか、通らない方が良いという言い方が正しい区間です。
この区間は正規ルートでは無いので、目印はもちろんありません。
足跡や獣道の類も皆無で、己の感覚を頼りに進むことになるので、GPS地図などで方向管理はマメに行う必要があります。
もし、ホワイトアウトしているようなときに足を踏み入れてしまえば道迷いの危険が付き纏います。
そして、遠目にみると大した傾斜に見えないですが、転倒したら数メートルは転げ落ちるだろう傾きはあります。
加えて場所によって、地面のコンディションもさまざまに変化します。
ズブズブの砂地で小石を下方に流してしまい落石に繋がるリスクがあったり、そうかと思えば、ガチガチに固まった滑りやすい砂地に変化して、転倒しないように慎重に通過しなくては行けなくなったりします。
特に前者は自分だけの問題では無いので、非常に不味いです。
今回、インターネットの情報などから、トラバースするルートを採用してしまいましたが、普通に通過してはいけない危ないルートでした。
ワゴニアまで到着したら、そのまま来た道を戻る方が安全に行き来できたと思います。
この点、反省です。
ギャラリー
幕岩へ降る区間
今回の山行ルート上の注意した方が良い区間の二つ目は「幕岩へ降る区間」になります。
「四辻」から「御胎内」へ続く山道から「幕岩」に降りる5分ぐらいの道のりですが、湿った粘土層が続く滑りやすい急坂が続きます。
とても滑りやすく、木の根がいっぱい横から突き出ている場所なので、転倒すると思わぬ怪我に繋がる危険があります。
ガイドロープが常に張ってあるので、うまく活用して安全に通過してください。
ギャラリー
今回の山行での服装
今回の山行では、次のような服装の組み合わせを持参していきました。
同じ時期に赴かれるときの参考にして見てください。
- ベースレイヤー:半袖Tシャツ
- ミドルレイヤー:薄手の長袖Tシャツ
- アウター:ソフトシェル、レインウェア
- ボトムス:薄手の長ズボン、厚手のソックス、スパッツ
- その他:手ぬぐい、ネックゲーター、薄手の手袋
今回の山行は、
- 天候:曇りのち晴れと良好
- 気温:下界の気温は30℃越えで蒸し暑いほど
- 活動場所:標高2,000mクラスの低い場所
ということで、始終半袖Tシャツで問題無く過ごせました。
帰りの高速バスの冷房が効きすぎる問題で、一時的に長袖Tシャツを重ね着しましたが、それがなければ、洗濯物の量はごく数枚で済むような状況でした。
以下の記事にわたしが里山登山に使っているウェアの具体的な品名や組み合わせについてまとめていますので、詳細知りたいようでしたら合わせて読んでみてください。
あなたが、同じ時期の同じ界隈に赴くときの参考になれば幸いです。
山行の記録
ここからは、今回の山行について述べていきます。
アプローチ
今回の山行は、「御殿場口新五合目停留所」からのアプローチです。
最寄駅は「御殿場駅」となるので、「東京駅」からだと次のように乗り継いでいくことになります。
- 「東京駅」からJR東海道線沼津行きに乗り込んで「国府津駅(こうづえき)」で下車
- 「国府津駅」から御殿場線に乗り換えて「御殿場駅」で下車
「国府津駅」で、一つとなりのホームまで階段の上り下りがあるのですが、沼津行き始発で向かった場合、乗り換え時間が約3分しかありません。
ホームを走っている客が居れば、ある程度は待ってくれるだろうといった希望的観測はJRには厳禁です。
時間に間に合うようにスムーズに乗り換えできるように、東京駅では先頭車両側に乗り込んでおくのをお勧めします。
先頭はホームを移動する階段の近場なのでスムーズに移動できるはずです。
それに、覚えやすいですしね。
電車に乗ったら、できれば駅に着く前に車内でおトイレを済ませて、今度は最後尾まで移動します。
「御殿場駅」は最後尾側に改札への階段があるので、これで少し時間が稼げます。
なんでこんなシビアな乗り換えを進めているかというと、関東圏からICカードで乗車した場合、管轄の違う「御殿場駅」では有人改札で都度精算しないといけないからです。
特に始発で乗り継いできていると、富士山御殿場口五合目行きのバスの出るまでの時間が10分程度しかなく、往復チケットを購入しているとギリギリになるからです。
自販機に並ぶ行列が長蛇になっていると、時間オーバーすることもあります。
JRと違って、ある程度は待ってくれるようですが、できれば座って移動したいので、なるべく早くバスに乗り込めるように、削れる時間はなるべく削っておくことをお勧めします。
始発乗り継ぎじゃ無い場合は、バス乗り場の反対側にある公衆トイレにでも立ち寄ってゆっくりすると良いでしょう。
御殿場口新五合目までの乗車時間は45分ほどです。
登山口に到着すると、目の前に協力金の募集テントが立っています。
強制というわけでは無いのでスルーもできますが、ここに山中パトロールの人件費や山小屋のトイレ修繕の費用が含まれているようです。懐具合と相談してなるべく協力してあげて下さいね。
また、少し降ったところに無料の公衆トイレもあります。
おトイレ近い方は、念の為ここでも済ませておくと良いかもしれません。
諸々準備できたら出発です。
関連リンク
富士急バスの公式サイトから、富士山を発着するバスの時刻表ページのURLを載せておきます。
山行計画を立てる際にお役立てください。
ちなみに、それぞれの登山口は往復チケットで購入しましょう。3割近く安くなるので、かなり幸せになれます。
また、登り降り別ルートになる場合にお得な「富士登山フリーきっぷ」もここの自販機で購入できます。
ただし、お値段は大人一人3,400円です。(2022年9月10日現在)
御殿場口新五合目と須走口五合目の行き来の場合、それぞれで片道分を購入した方が安くなるので、ご注意ください。(御殿場片道1,130円+須走片道1,570円=2,700円)
しっかり前調査して、賢く節約しましょう。
こういうときにも、思考停止は厳禁ということですね。
わたしも注意していきたいと思います。
ギャラリー
富士急バス「御殿場新五合目停留所」〜ワゴニア
「御殿場口新五合目」をスタートしたら、今回は山頂には向かわずに第二駐車場方面へ降っていきます。
そして、作業者の並ぶ駐車場を突っ切って、須走口五合目へ通じるブル道を遡っていきます。
ブル道と入ってもブルドーザーが通る機会はほとんど無いのか、キャタピラの後は皆無です。
所々に貼ってあるピンクのテープを目印に進むことになります。
このため、ホワイトアウトしてしまうと道迷いのリスクがありますので、歩き慣れていないと、読図もしくはGPS地図が必須になる点、ご注意ください。
電信柱が林立している場所が見えてきたら、そこからは山頂に向かって直登していきます。
ところどころ地中に埋まった電線が見えるので、時々貼ってあるピンクのテープと合わせてルート確認に活用ください。
獅子岩の両側に横たわる溶岩流の沢がみえてきたら、沢の外側を登っていきます。
1時間ほど登ると送電線の中継装置と思われる金属箱のような物の前に到着します。
ここまで登れば、目的「ワゴニア」が小さいながらも目視できますので、後は「ワゴニア」に向かって永遠と登るだけです。
御殿場の正規ルートと同じく、道中のコンディションは滑りやすい砂地なので、なるべく安定してそうな大きな石を見つけて足を乗せるようにすると、少し楽に登れるかと思います。
「ワゴニア」前まで到着したら、周囲の展望とあわせて、この不思議なクルマを近くで眺めてみてくださいね。
ギャラリー
ワゴニア〜御殿場旧二合八勺
「ワゴニア」周辺の様子を眺めたら、天気良いので双子山へ寄り道して下山することにしました。
このため、御殿場の正規ルートに向かってトラバースしていくことにします。
今思えば、ここは来た道を引き返して「御殿場口新五合目」から登り返すべきでした。
インターネット上でみた情報でも、任意な場所をトラバースしているようだったので、踏み跡のように見えた溝に沿って進んでしまいます。
しかし、10分もしないうちに溝も消えてしまい、なんの目印もないまま道なき道を突っ切ることになりました。
特別な技術は必要なかったですが、崩れやすい場所を何度か通ることになり、小石を落とさないように神経をすり減らすこととなりました。
大きな沢のような段差を登り降りして進むとようやくブル道に到達でき、ブル道を降ることで、双子山への分岐点「旧二合八勺」までくることができました。
ここまでこれば落石を発生させてしまう心配はほとんど無いので、やっと緊張を解くことができました。
富士山での安易なトラバースはしない方が良いですね。
今更ながら、勉強になりました。
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御殿場旧二合八勺〜上双子山〜下双子山
双子山への分岐点「旧二合八勺」からは、破線ルートとなります。
従って、ここからも自己責任の範囲で進みます。
このルートは最終的に「水ヶ塚公園」まで向かうのですが、途中で上双子山へ直接降下することになります。
そして、いつもとは逆側に伸びる登頂ルートから登っていきます。
こちらの方が長さが短い分、傾斜は急になっています。
滑ってずり落ち無いように、踏ん張りながら登っていくと10分ほどで「上双子山」の山頂に到着します。
こちらの山頂にはケルン(石積み)が2つだけの閑散とした場所ですが、天気が良いと富士山山頂や宝永山山頂を間近に見上げることができます。
残念ながら、今回は丁度雲の中に入ってしまったので、滞在することなく「下二子山」へ降りてしまいました。
「下二子山」では標高が低くなったことで雲を抜け、下界の展望を楽しむことができました。
ここには、伊邪那岐尊、伊邪那美命の夫婦神が祀られた石像が立っていて、その近くに山頂碑と三角点が設置されています。
折角の眺めだったので、ここで少し小休止をした後は、御殿場口区間で未踏のままにしていた幕岩経由の下山道を降っていくことにしました。
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下双子山〜幕岩〜富士急バス「御殿場新五合目停留所」
「下双子山」山頂のお鉢巡りをしたら、「幕岩」方面へ降ります。
「四辻」から樹林帯に入り、少々傾斜のある山道を降っていくと、「幕岩」への降下地点に到着するので、そちらへ向かって降ります。
この降下する区間、少々曲者で、滑りやすい粘土質の地面の上に濡れた落ち葉が積もっていて更に滑りやすい急坂になっているので、転ば無いように注意して降りてください。
5分ほど降ると「幕岩」の開けた場所に飛び出ます。
羽虫が多いので、記念写真を撮ったらすぐに先に進んでしまいましょう。
溶岩流の跡を辿って降っていくと、崩壊地が見えてくるので、その手前を左折していきます。
ここからは、樹林帯の比較的安全な道を降ることになります。
1時間ほど降ると、賑やかな声が聞こえ始めて、最終的には「御殿場口新五合目」の第一駐車場の奥に降り立つことができます。
バスの到着時間まで余裕があるようでしたら、トレステで時間を潰していくと良いでしょう。色々なパンフレットや掲載物、ちょっとした展望台なんかがあって、それなりに楽しむことができますよ。
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おまけ
「御殿場駅」でお風呂というと、わたしの中では大衆浴場「人参湯」です。
この日も、同じく「人参湯」に寄り道して汗を流させてもらいました。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
マイカー組なら、高速道路付近にあるいろんなお風呂に立ち寄れるのでしょうが、ノーマイカー組だと移動手段が無くて、なかなか難易度が高いので、ここ一択になりつつあります。
それでも必要十分な状況ではあるのですが、臨時休業などで立ち寄れ無い場合の代替も欲しいなと思い始めてもいます。
もし、目ぼしい情報お持ちでしたら内緒で教えてくださいね。
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まとめ
富士山御殿場新五合目からルート外に放置されているワゴニアの残骸を見に行った様子でした。
ワゴニアの埋まっている場所自体は、特に危険な場所では無く、ブル道から直登すれば時間はかかりますが、到着に手間取ることはないかなとは思います。
周囲の展望も良く、とても魅力的な場所ではありますが、正規のルートでは無いので、大手を降っておすすめとは言い切れ無いのが歯痒いところです。
全てが自己責任な場所だということをご了承いただいた上で、しっかりと準備を整えてから訪れていただければ幸いです。
確実に言えるのは、富士山での安易なトラバースは厳禁といったところでしょうか。
今後、わたし自身注意していきたいと思います。
それでは、ここまでお読みくださりありがとうございます。
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