7月も最終週となり、富士山の登山シーズンも本番に入って来ました。
昨年は、外出自粛の影響で客足は少なかったようですが、2022年の登山客はコロナ禍以前の水準に戻って来ているという報道もあります。
実際、7月中旬からの富士山はかなり混雑しており、ちょっと辟易してきた気持ちもあります。
そこで、今週は混雑を避けられそうな少しマイナーなルート「プリンスルート」を辿って山頂にある浅間大社奥宮まで歩いてみました。
標高2,400mの富士宮口五合目からスタートということで歩行距離が短いものの、後半は御殿場ルートに乗り入れるのでキツいんだろうと思っていたのですが、想像以上に軽快に登れてしまいました。
富士山登りたいけど、渋滞の中を歩くのは嫌だなと考えているなら最適解の一つになり得るかなと思います。
是非、最後まで読んでいってくださいね。
基本情報
まずは、今回の山行についての基本情報です。
日付:2022/7/30
天候:晴れのち曇り
エリア:富士山エリア
コース概要:富士急バス「富士宮口五合目停留所」〜富士宮口六合目〜宝永山第一火口〜宝永山馬の背〜鉄のワラジ〜御殿場口七合五勺〜銀明水〜浅間大社奥宮〜銀明水〜宝永山馬の背〜宝永山〜富士宮口六合目〜富士急バス「富士宮口五合目停留所」
難易度:体力☆☆、技術☆、危険☆
交通機関:
(往)JR東海道線「三島駅」から富士急バスで、「富士宮口五合目停留所」へ
(帰)「富士宮口五合目停留所」から富士急バスで、JR身延線線「富士宮駅」へ
概要
プリンスルート(ぷりんするーと)
プリンスルートは、今上陛下が皇太子だった平成20年8月に富士登山された際に辿ったルートです。
概要は次のとおりです。
登山ルート
- 富士宮口五合目よりスタート
- 富士宮口六合目まで登り、宝永山方面へトラバース
- 「宝永山馬の背」まで登り、御殿場口登山道までトラバース
- 以降、御殿場口登山道を辿って登頂
下山ルート
- 「銀明水」から御殿場口下山道に入り、「大砂走り」を降って御殿場口新五合目へ下山
標高2,400mの富士宮口五合目からスタートするので山頂までの標高差が短く済みます。加えて、途中から御殿場ルートにトラバースするので、富士宮ルート山頂直下の渋滞区間を避けられます。
御殿場ルートに移った後は、六合目から登り始めることになるので、キツい五合目付近のザレ場区間も避けられます。
まさに、いいとこ取りのルートですね。
唯一の難所、「宝永山第一火口」から「宝永山馬の背」への登り坂さえ無事にクリアできれば、特殊な技術は不要でマイペースに登ることができるので、初心者向けにも良いルートと言えるでしょう。
展望の面でも、なかなかおすすめです。
富士宮ルートと御殿場ルートのいいとこ取りができてお得感がありますし、宝永山に寄り道して360度の展望を楽しむこともできるので、富士山登頂主要4ルートと比べても遜色ない良いルートかと思います。
富士山登頂主要4ルートについては、次の記事に詳しくまとめてます。興味あったらこちらもご覧ください。
今回の山行上でのポイント
地図上の位置と標高
今回の山行で歩いた場所について、地図上の位置、標高です。
「Download file」のリンクからGPXデータとしてダウンロードできます。
ご自由にご活用ください。
最高点の標高: 3720 m
最低点の標高: 2363 m
累積標高(上り): 1662 m
累積標高(下り): -1655 m
総所要時間: 08:06:13
歩いた軌跡
続いては、GPSデータを元にした軌跡です。
市販の地図
今回の山行ルートが掲載されている市販の地図も載せておきます。
本来であれば、国土交通省国土地理院のサイトから2万5千分の1地形図を購入、印刷して持参するのが正しい在り方ですが、毎回それだと面倒なので、紙面の地図は5万分1の市販地図をザックに入れて持って行くことにしています。
わたしの山行でのメイン地図はGPSアプリに移っており、紙面地図は予備扱いなため、今のところこの運用で困った事態には陥っていません。
ただ、読図の勉強をちゃんとしたい場合は、2万5千分の1地形図を購入した方が良いです。
5万分の1の等高線は荒すぎて地形把握には、ほぼ役に立たないのでご注意くださいね。
おすすめ展望ポイント
今回の山行ルート上の展望ポイントは、次の通りです。
- 宝永山遊歩道
- 宝永山第一火口縁
- 宝永山山頂
宝永遊歩道
今回の山行ルート上での展望ポイント一つ目は「宝永山遊歩道」です。
富士宮口六合目の山小屋から宝永山方面へトラバースする道なのですが、南面へ大きく開けた区間になっていて、駿河湾や西伊豆の海岸線からどこまでも広がる太平洋の様子を楽しむことができます。
空気が澄んでいれば伊豆稜線歩道に連なる山々や天城山を眺望できることもあります。
この日は、雲海と半々な眺めになりましたが、夏らしい白と青の風景を楽しめました。
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宝永山第一火口縁
今回の山行ルート上での展望ポイント二つ目は「宝永山第一火口縁」です。
私のブログでは何度か取り上げているポイントです。
赤茶けた海坊主のような風態の宝永山山頂を眺めることができます。
ここで見ることのできる剥き出しの岩肌は、普段生活している中ではほぼ見ることは無い、異様な雰囲気を醸し出しています。
富士宮口五合目から1時間程度でくることが出来るので、普段着のまま訪れる方もいらっしゃって、その点も異質に感じる面白い場所です。
天候に恵まれた日に訪れてみてくださいね。
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宝永山山頂
今回の山行ルート上での展望ポイント三つ目は「宝永山山頂」です。
富士山登頂の記事なのに、宝永山ばかりになってしまいましたが、それだけ展望に恵まれた場所だということです。
ここからは、剥き出しの岩肌の合間から富士山山頂を除いた全方位の展望を楽しむことができます。
代表的なものとしては
- 御殿場、小田原、三島、沼津、富士宮それぞれの市街地の様子
- 箱根、愛鷹、伊豆方面それぞれの山々
- 相模湾、駿河湾それぞれの海岸線
これだけのものを一度に眺めることができる、とても欲張りな場所です。
今回は半分以上雲海に覆われてしまいましたが、それでも絶景を楽しむことができました。
「宝永山馬の背」からでしたら、ザックをデポって身軽に行き来することもできるので、近場まで来たら是非、立ち寄ってみてくださいね。
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注意した方が良さそうな区間
今回の山行ルート上で、注意したほうがよさそうな区間は、以下の通りです。
- 「宝永山第一火口」から「宝永山馬の背」への登り区間
「宝永山第一火口」から「宝永山馬の背」への登り区間
今回の山行ルート上で、注意すべき区間は「宝永山第一火口」から「宝永山馬の背」への登り区間です。
火口の底から縁まで登るジグザグの坂なのですが、不安定な火口の中を進むことになるので常に落石のリスクが生じます。
周囲の音に気をつけて進むようにしてください。
加えて、区間内は火山石が深く降り積もっていて踏ん張りの効かない坂道を登ることになるので、体力の消耗が激しい区間にもなります。
一気に登り切ろうとするのではなく、なるべく石が盛り上がっていない地点に足を下ろすようにして進むと体力温存になるでしょう。
雪山登山を経験しているようでしたら、キックステップで登るのも一つの手です。
私も、あまりにズルズル滑る場所については、つま先で石を蹴り上げて足場を作って登ったりしています。
それ以外では、できるだけ大きな岩を見つけて足を置くように進むと足場が安定してスムーズに進めるかと思います。
ここでどれだけ体力温存できるかが、後半の登りに大きく影響してきます。
可能な限りペースを落として、通過してみてください。
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今回の山行での服装
今回の山行では、次のような服装の組み合わせを持参していきました。
同じ時期に赴かれるときの参考にして見てください。
- ベースレイヤー:半袖Tシャツ
- ミドルレイヤー:薄手の長袖Tシャツ
- アウター:ソフトシェル、レインウェア
- ボトムス:薄手の長ズボン、厚手のソックス
- その他:手ぬぐい、ネックゲーター、薄手の手袋
この日、下界は猛暑な1日となりました。
公共機関の移動中も、山中での活動中も半袖Tシャツをメインに過ごすことになりました。
始終、汗が止まらない状態でしたが、直ぐに乾いてしまい汗冷えする事態にならなかったのは良かったです。長年、老舗アウトドアメーカーのウェアを使っているので、この辺りはとても信頼しています。
山頂のお鉢に到着した時に、一時的な豪雨に見舞われましたが撥水性のあるソフトシェルで対応できました。
雨脚の強さを考えるとレインウェアを羽織っておいた方がよかったかも知れませんが、すぐに降り止んでくれたので大事には至りませんでした。
以下の記事にわたしが里山登山に使っているウェアの具体的な品名や組み合わせについてまとめていますので、詳細知りたいようでしたら合わせて読んでみてください。
あなたが、同じ時期の同じ界隈に赴くときの参考になれば幸いです。
山行の記録
ここからは、今回の山行について述べていきます。
アプローチ
今回の富士登山は、「富士宮五合目停留所」からのアプローチです。
関東圏より向かうのには、JR東海道線「三島駅」南口から「富士宮口五合目」行きの路線バスに乗るのが一番早いです。
今回もそのルートで向かうことにしました。
「東京駅」よりJR東海道線沼津行きの始発に乗って「三島駅」まで向かいます。
「三島駅」に到着したら、南口改札を出てまっすぐ進んだところにある「2番のりば」がお目当ての乗り場です。
しかし今回は、先に富士急バスの有人窓口へ向かうことにします。
富士山開山中は富士急バスから「富士山フリーきっぷ」というお得なきっぷが発売されていて、このチケットを購入するのが目的です。
この「富士山フリーきっぷ」なるものは、3,400円で各五合目までの特定ルートが乗り放題になるというもので、登山口と下山口が異なるプランの時に効果を発揮します。3日間の有効期間があるので山中泊にも対応できます。
「三島駅」から「富士宮五合目」までは片道2,500円なので、往復すると5,000円にもなります。
なるべく安く富士登山を済ませたいという場合には、必須のチケットになるのでバス乗車前に忘れずに購入しておきましょう。
そして「三島駅」でのおトイレは、構内は南口改札手前、構外はバスのチケット売り場の反対方向にあります。
「三島駅」に降りたら可能な限り素早くバスのチケット売り場に向かいたいので、東海道線車両内で済ませておくのがベストです。
おトイレ省略してバスに乗っても良いですが、あんまりおすすめはしません。
理由は「富士宮五合目」までのバス乗車時間です。
2時間の長旅になるので、乗車前に一度済ませておいた方が安心です。
途中の「遊園地ぐりんぱ」でおトイレ休憩を入れてくれますが、そこまででも1時間は乗りっぱなしになります。
バスの振動に耐えながらおトイレ我慢するのは、かなりしんどいので素直におトイレ済ませてから乗車してくださいね。
関連リンク
富士急バス公式サイトの富士山フリーきっぷ紹介ページです。詳しくはこちらのページをご確認ください。
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富士急バス「富士宮口五合目停留所」〜富士宮口六合目
バスを降りると、仮設のレストハウスとおトイレがあります。
必要によりお借りして身支度を整えたら、一段上にある富士宮登山口に向かいます。
登山口前に協力金収集のテントがありますので、直ぐわかると思います。
階段を上り、撮影スポットになっている「富士山表口五合目標高2400m」の案内前を通過したら、溶岩石のゴツゴツとした足場の悪い山道を登っていきます。
これは六合目まで続きますのが高地順応のつもりで、ゆっくり登って行ってください。
六合目の二つの小屋を通過すると、山頂方面と宝永山方面への分岐が現れますので宝永山方面へまっすぐ進みましょう。
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富士宮口六合目〜宝永山第一火口〜宝永山馬の背
宝永山方面へ向かう道は「宝永山遊歩道」と呼ばれる独立したハイキングコースになっています。
アップダウンのほとんどない道且つ、南面への眺望がすこぶる良い道なので、眺めを楽しみながら進むと良いでしょう。
10分も歩けば「宝永山第一火口縁」で佇む人だかりが見えてきます。
ここは「宝永山」絶好のビュースポットになりますので、少し立ち止まってその異景を楽しんでみてください。
その後は、宝永山第一火口へ向けて降下し、反対側の縁を登っていくことになります。
この縁を登る坂ですが、細かい火山石の降り積もった不安定な道となります。
加えて、下山者とのすれ違いも結構ありますので、転んだりしないよう足元注意しつつ進んでください。
坂を登り切れば「宝永山馬の背」に到着です。
雲の通り道で強風が吹くことのある場所ですので、物を飛ばされないように注意しつつ通過するようにしてください。
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宝永山馬の背〜鉄のワラジ〜御殿場口七合五勺
「宝永山馬の背」を通過したら、御殿場ルート下山道「大砂走り」に入ります。
逆走するように登っていくと、向かって右手に登山口方面へのトラバースルートが見えてくるので、そちらの分岐に入ります。
このトラバースルートですが、歩いている人はほとんど居ないため、しっかりと踏み固められてはいません。
踏み跡が不明瞭な場所もあるので、変なルートに迷い込まないようご注意ください。
15分から20分ほど進むと、「御殿場六合目」を示す案内が見えてきて御殿場ルート登山道に合流できます。
丁度合流する地点からは「鉄のワラジ」を繋ぐ鉄棒が見えるかと思います。
少し斜面を登りはしますが、大した労力にはならないはずなので、是非、寄り道してみてくださいね。
「鉄のワラジ」を確認したら、登山道に戻って普通通りに登っていきます。
ここから七合目「日の出館」(休館)、七合四勺「わらじ館」、七合五勺「砂走館」と山小屋ラッシュが続きます。
人との接触機会が増えるので、トラブルなど起こさないように気をつけて通過してください。
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御殿場口七合五勺〜銀明水〜浅間大社奥宮
七合五芍「砂走館」から先は、赤茶けた火山石や溶岩石が特徴のガレ場区間に入ります。
先ほどまでとは足元の状況が変わるので、転ばないように注意して進んでください。
途中「気象庁観測所跡」、「赤岩八合館」、八合目「見晴館」(休館)と通過していくと、山頂に続く九十九坂が見えてきます。
永遠と続く坂の様子を眺めていると心が折れそうになるので、チラ見程度でささっと先に進む方が良いです。
坂を折れ折れ進んでいくと、鳥居が見えてきて「銀明水」に到着です。
これで富士山山頂のお鉢に乗ることができました。ひとまず富士登頂達成です。
せっかくなので最高峰「剣ヶ峰」まで進むこととし、「浅間大社奥宮」の方に向かいます。
しかし、神社に到着しご挨拶を済ませると、前触れなく大粒の雨が降り出してしまいました。
神社に戻り10分ほど雨宿りさせてもらいましたが、雨脚が衰える気配がしなかったので今回はここまでで下山することとしました。
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浅間大社奥宮〜銀明水〜宝永山馬の背
夕立のような雨の中、周囲はレインウェアを装着していましたが、ザックカバーを取り付けてソフトシェルを羽織っただけで急ぎ下山行動に入ります。
急すぎる雨だったので、直ぐに上がるだろうという考えでしたが、うまくハマってくれたようで30分程度で止んでくれました。
(改めて読み返してみての反省です。これ、危ない判断でした。あのまま土砂降りが続いたら、低体温症まっしぐらだったかもしれません。本降りの雨に遭遇したら面倒がらずにレインウェア着ないとですね。)
「赤岩八合館」まで降ってくると陽の光も出てきて暑くなってきたので、足元にスパッツを装着するついでにソフトシェルもザックに仕舞います。
富士山では雨は全て地面の中に吸収されてしまうので、水溜りなどに足を取られることはほとんどありません。
軽快に「大砂走り」の分岐まで降っていくことができました。
そして、「大砂走り」をそのまま降って「御殿場新五合目」にてゴールというのがプリンスルートの正規行程になりますが、ここで勘違いです。
元きたルートを戻るのが正しいルートと思い違いをしてしまい「宝永山」への分岐に入ってしまいました。
それでも、「宝永山」方面の眺めがとてもよく、これはこれで楽しい山行にできました。
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宝永山馬の背〜宝永山〜富士宮口六合目
そのようなわけで、「宝永山馬の背」に向い降下したらそのまま直進して「宝永山山頂」へ向かいます。
「宝永山山頂」へ移動するまでに雲が増えてしまいましたが、逆に広大な雲海への眺めを楽しむことができ満足した足取りで「宝永山第一火口」へ降ります。
その後の登り返しがなかなか難儀でしたが、問題なく「宝永山第一火口縁」まで向かい「宝永山遊歩道」を辿って「富士宮口六合目」まで到着することができました。
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富士宮口六合目〜富士急バス「富士宮口五合目停留所」
六合目で時計を確認すると丁度17時30分となっていまいした。
これなら18時の富士宮駅行きのバスに間に合いそうです。
あとはのんびり進んでもよかったのですが、バスの混雑具合がどれほどになるかわからない状況だったので、なるべく早く駆け降りて座席確保することにしました。
今回は「剣ヶ峰」まで登っていないので、体力は有り余っています。
スルスルと駆け降りてバス乗り場まで到着してみると、「水ヶ塚公園」行きのバスには長蛇の列ができていましたが「富士宮」行きのバスは比較的空いている状態で、相席する事なく駅まで快適に下山することができました。
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まとめ
富士山プリンスルート登頂の様子でした。
このルートは、知名度がそれほど高く無いからか利用している方がとても少ない印象です。
別段、難易度が高いというわけでも無いので、ゆっくり落ち着いて富士登山を楽しみたいのであれば十分満足できるルートと思います。
コロナ禍からの全面解放で、混雑極まりない今年の富士山ですが、ルート取りにも工夫して快適に楽しんでもらえたら幸いです。
それでは、ここまでお読みくださりありがとうございます。
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