山のアクシデント|熱中症に対する5つの予防策と3つ対策

アクシデント

ここ最近、日本の夏は猛暑日が続くようになりましたね。

場所によっては、40℃を越える気温を叩き出す殺人級の暑さを示した場所もあります。

そんな極悪な暑さを回避すべく、標高3,000m級の高山に登って涼を取ろうと考えるのは当然のことだろうと思います。

しかし、高い山の稜線は強烈な直射日光が体を焦がす環境でもあり、熱中症を発症してしまう恐れもあります。

この記事では、登山における熱中症予防について紹介していきます。

合わせて、熱中症に罹ってしまった時の対応策についても説明していますので、登山に赴く前に目を通していってもらえたら幸いです。

なお、わたしは医療の専門家では無いので、より正確性を求めるようでしたら、専門家の持つ情報ソースにてご確認いただければ幸いです。

熱中症とは

まずは熱中症とはどのような病気か基本的なについて述べていきます。

人間の身体は、周囲の気温が変化しても、体内温度を一定に保つ適応力というものを持っています。

しかし、激しい外部環境下にあっては、体に備わった冷却機能が間に合わなくなり異常な体温上昇をきたす恐れがあります。

この病態を熱中症と呼んでいます。

これは、街中、室内とどこに居ても起こり得ます。

特に登山活動中は、高温多湿、直射日光、無風状態と体内温度を上げやすい環境の中を長時間活動することになるので、熱中症を発症しやすい危険な環境だと言えます。

また、熱中症から重症度の高い熱射病になってしまうと、さまざまな臓器が機能不全を起こし最終的には死に至ます。

このため、しっかりと予防していく必要のある危険な病気となっています。

熱中症の主な症状

続いて、熱中病の主な症状についてです。

ここでは、日本救急医師学会の提唱している、重症度によりI〜Ⅲ度に分類する形で説明ていきます。

I度(熱痙攣、熱失神)

この段階では、主に以下の症状が見られます。

  • めまい
  • 立ちくらみ
  • 生あくび
  • 大量の発汗
  • 筋肉痛
  • こむら返り

ここまでの範囲なら、現場での応急処置と様子見で対応可能と設定されています。

症状の中のこむら返りを指して「熱痙攣」と呼んだり、めまいや立ちくらみから「熱失神」と呼んだりする場合もあります。

II度(熱疲労)

この段階では、主に以下の症状が見られます。

  • 頭痛
  • 嘔吐
  • 倦怠感
  • 虚脱感
  • 集中力や判断力低下

ここまでくると、速やかに医療機関での診察が必要な状況と設定されています。

症状の中の倦怠感や虚脱感により、体がぐったりすることから「熱疲労」と呼ばれる場合もあります。

Ⅲ度(熱射病)

この段階では、主に以下の症状が見られます。

  • 意識障害
  • 痙攣発作
  • 肝・腎機能障害
  • 血液凝固異常

ここまできてしまうと命の危険を伴う段階に突入します。医療者による判断により入院、集中治療が必要な状況と設定されています。

「熱射病」は、この最終段階を指した病名です。

熱中症が発症しやすい人の特徴

ここでは、熱中症が発症しやすい人の特徴について述べていきます。

あなたも当てはまる項目があったら、ご注意ください。

  • 腎臓病、糖尿病、精神疾患、心疾患、認知症、自律神経失調症のいずれかを患っている
  • 高血圧である
  • 抗精神病薬を服用している
  • 利尿薬を服用している
  • 高齢者である(国連で定める高齢者は60歳以上なので、一般的に見て60歳以上とみておけば良いでしょう)
  • 幼児である(日本の法律上では1歳から小学校に入る前までだそうです。6歳くらいまでというところでしょうか)
  • 肥満である
  • 運動不足である

これらに加えて、外的要因として次のような環境下で活動していると更に発症リスクが高まるようです。

  • 高気温
  • 強い日射し
  • 高湿度
  • 輻射熱
  • 無風

ほぼ全てにおいて、登山中に当てはまることばかりになっています。

それだけ、登山は熱中症に罹りやすい環境だと言うことができるでしょう。

熱中症にならないための5つの予防策

熱中症の症状について基本的なことがわかったところで、熱中症にならないための予防策5つを示していきます。

熱中症にならないための5つの予防策
  • 小まめに水分補給をする
  • 通気性、吸水性の良いウェアを着る
  • 日射しを遮るアイテムを装着する
  • 暑い環境に慣れておく
  • 痩せる

小まめに水分補給をする

熱中症にならないための5つの予防策の一つ目は「小まめに水分補給をする」です。

参考書籍「中外医学社 高山病と関連疾患の診察ガイドライン」によると、運動中に体重の1%の水分を失うと、直腸温が0.3℃上昇するそうです。

現在、わたしの体重は50kg前後なので、脱水量が500mlを超えたあたりから体内温度が上がっていくということになります。

ペットボトル1本分消失したタイミングというとそれほど余裕あるわけではなさそうです。

わたしは入浴が好きなので、毎日1時間ほどKindle片手に湯船に浸かってるのですが、出てきた直後に体重計に乗ると0.5kg(=500ml)くらいは平気で体重が減ってます。

ちょっと長湯した程度で、減ってしまう量ということです。

そして、人間が一度の給水で吸収できる水量は200〜250mlまでといった制限もあります。

登山では、非常に多くの汗をかくので、小まめに水分補給をして脱水率1%未満を維持できるようにすると良いでしょう。

また、同書籍「中外医学社 高山病と関連疾患の診察ガイドライン」の中には、登山活動中の脱水量を導く公式というのも記載されていました。

個人差はあるものの、一度の山行に必要となる水量を測る目安になるかもしれませんので、掲載しておきます。

「行動中」の脱水量(ml)=体重(kg)✖️行動時間(h)✖️5

引用:「中外医学社 高山病と関連疾患の診察ガイドライン」

これは、日本の山で登山を行った9〜73歳までの59名に対して、行動中の脱水量を測定して割り出した公式なんだそうです。最後の「5」という脱水係数を、自身の例に合わせて調整する使い方になります。

わたしの日帰り富士登山を例に計算すると、次のようになりました。

2,000ml = 50kg ✖️ 8時間 ✖️ 5

その日の水分摂取量は500ml程度だったので、熱中症にかからないようにするためには、水分補給するタイミングをもっと増やす必要がありそうです。

参考書籍

編集:日本登山医学会 高山病と関連疾患の診療ガイドライン作成委員会
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通気性、吸水性の良いウェアを着る

熱中症にならないための5つの予防策の一つ目は「通気性、吸水性の良いウェアを着る」です。

前項で登山は非常に汗を掻く活動だと説明しました。

汗が滲みてびしょびしょになったウェアを着続けていると、単純に不快なだけでなく、熱を外部に放出するときの妨げになってしまいます。

特に綿を多く使ったウェアは乾きにくく、空気がうちに篭りやすくなりますので、熱を外部に放出しやすい化繊100%のウェアで臨むのが良いでしょう。

以前まとめた、おすすめのウェアについての記事を載せておきます。参考にしてみてくださいね。

日射しを遮るアイテムを装着する

熱中症にならないための5つの予防策の一つ目は「日射しを遮るアイテムを装着する」です。

「通気性、吸水性の良いウェア」を着るのに合わせて、帽子やアームカバー、ネックゲイターなど、直接肌に日射しが当たらないようにするというのも、熱中症予防に有効です。

最近は、UVカットのアイテムも増えてきましたので、日焼け防止という点でも効果が期待できます。

わたしが愛用しているUVカット仕様「Buffネックゲイター」についての記事を載せておきます。

取り入れる際の参考になれば幸いです。

暑い環境に慣れておく

熱中症にならないための5つの予防策の一つ目は「暑い環境に慣れておく」です。

人間の身体は、暑い環境に身を置くことで、暑さに慣れて熱中症への耐性が高まります。

具体的には、暑さを感じる環境で、毎日キツめの運動を30分繰り返していくと徐々に暑さに耐性がついてくるのだそうで、これを「暑熱順化(しょねつじゅんか)」と言うようです。

個人差はありますが、2日〜14日ほど続けることで実感出てくるようです。

湯船に浸かって汗を出すのでも効果はあるようなので、運動する時間が取れないようだったらお風呂に長めに浸かっておけば効果出てくるかもしれませんね。

痩せる

熱中症にならないための5つの予防策の一つ目は「痩せる」です。

同じ運動量をこなしたとしても、太っている方が体内温度が高くなる傾向にあるようです。

そして、体内温度が高くなればなるほど、体外に放熱するための発汗が増え、そのことで脱水症状を起こしやすくなり、熱中症へのリスクも高まるといった具合になります。

できるだけ、定期的に運動して無駄な贅肉を減らすようにしたほうが良いでしょう。

わたしも、お腹に巻いてある贅肉の浮き輪を、頑張って減らすようにしたいと思います。

一緒に頑張っていきましょう。

熱中症になってしまった時の3つの対応策

熱中症に対する予防策を上げていきましたが、何事も100%ということはありません。

特に相手が大自然ともなると、その時々の状況次第では簡単に熱中症となってしまうこともあり得ます。

そこで、万が一、熱中症になってしまったときに有効な3つの対応策についても述べておきます。

熱中症になってしまったときの3つの対応策
  • 涼しい場所を探して休憩する
  • 身体を冷やす
  • 塩分を摂りつつ水を飲む

速やかに下山する

熱中症になってしまったときの対応策の一つ目は「速やかに下山する」です。

自覚症状が出た段階で、すぐに下山する判断ができるなら、そのまま下山してしまいましょう。

直射日光の当たらない屋内で休むことで、自然に症状が回復していく可能性が出てきます。

万が一、症状が悪化してしまったとしても、医療機関に向かう手段も確保できます。

山の中に留まっていては、上記のようには行きません。

最悪の場合、自力下山が出来ず遭難につながる恐れが出てきてしまいます。

山での遭難は、状況がどうであれ絶対悪です。この場合は仕方無いとか、ありません。

絶対に遭難しなように、余裕があるうちに対策を講じるようにしてくださいね。

その場で休憩する

熱中症になってしまったときの対応策の二つ目は「その場で休憩する」です。

本当であれば、自覚症状が出た時点で下山してしまうのが最良の手段ですが、すぐに動けない場合も出てくるかもしれません。

その場合は、一旦、その場で休憩するようにしてみてください。

近くに日陰があるならば、そちらに入ってから休むとさらに有効です。

なお、休憩するときは、その場で横になって、体よりも足を少し高い位置にして休憩すると症状緩和に繋がりやすいです。

首筋を水筒や濡れた手拭いなどで冷やすのも効果的ですので、併せて処置してみてください。

そして、症状が緩和したら速やかに下山することを検討してくださいね。

塩分を摂りつつ水を飲む

熱中症になってしまったときの対応策の三つ目は「塩分を摂りつつ水を飲む」です。

熱中症を起こす時には、大量の発汗による脱水症状も併せて起こっていることが多いです。

この脱水症状を改善することで、熱中症の症状緩和にも繋げることができます。

しかし、水だけを飲んでも大した改善にはなりません。

塩分を摂りつつ水を飲まないと緩和につなげることができないのでご注意ください。

理由は、こうです。

大量の発汗は、体内の水分だけでなくミネラルも体外へ排出させてしまいます。

この時に、水だけを摂取すると体内の水分に対するミネラル濃度が薄まってしまうことになります。

人間の身体は、体内のミネラル濃度を一定に保つための機能というのも持ち合わせているので、薄まってしまったミネラル濃度を戻すために、余分な水分を外に排出しようとします。

従って、いくら大量に水だけを摂取しても、摂取した分の水分は体内に留まってくれずに尿や汗となって排出されてしまうので、脱水症状の改善には役立たないという具合になります。

これらを防ぐために、少し塩分を含ませた水を飲むようにすると良いと言われています。

どれぐらいの濃度が適正かというと0.9%ぐらいの濃度が良いようです。

ただ、この濃度の食塩水を飲んでみると分かりますが、行動時の飲料水とするには塩っ辛すぎるので、水筒に入れて持ち歩くのはちょっと避けたくなります。

それならば、塩だけ別に持っていくかとなると、普段から山飯を自炊するような山行をしていない限り、そのうち台所へ置き忘れたまま家を出るようになるのは目に見えてます。

そこで、おすすめするのが、塩分を含んだ飴をおやつに持っていくことです。

昔は、甘ったるい飴か、のど飴ぐらいしかありませんでしたが、ここ最近は100円均一でも塩分を含んだ飴を置いていたりします。

これらを持っていって、必要な時に口に含むとお手軽な塩分補給になります。

飴なら、小腹が空いた時の腹の足しにもできるし、色々と活躍するシーンがあるかと思います。

ぜひ一度、ご検討ください。

まとめ

熱中症にならないための5つの予防策
  • 小まめに水分補給をする
  • 通気性、吸水性の良いウェアを着る
  • 日射しを遮るアイテムを装着する
  • 暑い環境に慣れておく
  • 痩せる
熱中症になってしまったときの3つの対応策
  • 涼しい場所を探して休憩する
  • 身体を冷やす
  • 塩分を摂りつつ水を飲む

山で発病するとおっかない「熱中症」についての予防策5つと、対応策3つを紹介してきました。

最近まで、わたしは登山で「熱中症」なんて罹ったことが無いと思っていたのですが、「生あくび」や「こむら返り」を頻繁に起こしていたので、自覚のないまま「熱中症」予備軍になっていたんだろうと言うことが解ってきました。

特に、山行中は飲み食いをほとんどしないタイプなので、水分補給だけでも定期的にするように心がけようと思います。

あなたも、気がつかないうちに「熱中症」予備軍に入隊していたなんてことがないよう、ここで紹介した予防策を取り入れていただき、安全な登山をお楽しみください。

それでは、ここまでお読みくださりありがとうございます。

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