梅雨の時期から夏場にかけての里山は猛暑です。
森林限界となる標高2,000mを越えない里山の山中は、青々と茂った木々や草花に囲まれて風通しの無い多湿になりがちで、歩いているとしっかり発汗できて気持ちが良い反面、体力の消耗もなかなか激しくなってきます。
そんなときに、沢筋に出会うと流水で発生する涼しい風と音色で、体も気持ちもクールダウンできて、更に気持ちの良い山歩きを続けられます。
今回は、そんな一服の清涼を求めて棒ノ折山にある沢登り初心者向けの白谷沢コースを組み入れた山遊びをしてきてみました。
基本情報
まずは、今回の山行についての基本情報です。
概要
川苔山
川苔山は、東京都の奥多摩町にある山で、雲取山から続く長沢背稜や石尾根からは外れた場所に位置しています。
川乗山と読まれることもありますが川苔山のほうが有名のようで、これは山域にある川苔谷から取られたという由来があります。
標高は1,363mとそれほど高くはありませんが、山域にある百尋ノ滝の人気が影響してか訪れる登山客はとても多い印象です。
山頂からの眺望は、西側に開けていて雲取山から続く石尾根の山々や近隣の大岳山、御前山などがよく見えます。三頭山はどっかの山に隠れてしまっているのか確認することができなかったですがもしかすると見えてるのかもしれません。天候に恵まれれば富士山も見えるので探してみてください。
登山に適した時期は春秋と初冬。夏場は草木に囲まれて多湿になるので、わたしのように汗出しまくるのが大好物じゃないならオススメはしません。それと冬場は前述した百尋ノ滝が氷爆となるようなので、アイゼンワーク練習してから訪れるのもありかもしれません。
登山コースは多岐に渡り、よく踏まれているコースは以下の5つがあります。
- 川乗橋から百尋ノ滝を経由し登るコース
- JR奥多摩駅から本仁田山を経由し登るコース
- JR鳩ノ巣駅から北上して登るコース
- JR古里駅から赤杭尾根を登るコース
- 日向沢ノ峰方面から南下して登るコース
おすすめのコースは、百尋ノ滝を経由し登るコースになります。
なお、山中には宿泊施設や避難小屋類はありません。ビバークを強いられるような山行は絶対避けた方が良い山ですので、その点はご注意ください。
ギャラリー
動画でみると以下のような感じです。
日向沢ノ峰
日向沢ノ峰は、都県堺尾根と言われる長沢背稜の尾根筋にある山で、東京都の奥多摩町と埼玉県の飯能市の間に位置している山です。飯能市からみると市内最高峰の山となるようですが、住所としては東京都の西多摩郡奥多摩町大丹波になるようです。
日向沢ノ峰は、「ひむかいさわのうら」と読むようで普通には読めません。気になって名前の由来を調べてみたのですが、案外に情報が少なく「公益社団法人日本山岳会 東京多摩支部HP」に以下のような記載がありました。
峰(うら)は高みを指す古語だ。大丹波川源流の日向沢が突き上がる頭である。
引用:公益社団法人日本山岳会 東京多摩支部HP
「高みを指す」とか、なんだかロマンがいっぱい詰まった山名ですね。
標高のほうは、1,356mと辛うじて川苔山には届きませんが、山頂直下の急坂の印象が強く、わたし的には川苔山より高い山というイメージがありました。
山頂からの眺望は、西と南に開けており、近隣の蕎麦粒山や川苔山を確認することができます。ただ休めるスペースがほとんど無いこともあり、一瞬立ち止まって写真を撮っただけで通過していく方が大半です。
登山に適した時期は、川苔山と同じく春秋と初冬。日向沢ノ峰は公共交通機関からのアプローチが難しく、どこかの山域を経由してくる必要があるので、暑すぎる夏場や路面凍結の恐れがある冬場に訪れるには向きません。
アプローチの話が出たので、ついでに登山コースについても述べておきます。以下のようなコースで登ることになります。
- 川苔山方面から北上して登るコース
- 蕎麦粒山方面から長沢背稜を東へ向かって登るコース
- 棒ノ折山方面から長沢背稜を西へ向かって登るコース
- 有間峠方面から南下して登るコース
どのコースも人通りは少ないですが、おすすめのコースは川苔山方面から北上して登るやつです。
このコースは、山頂直下に2段の急坂が控えています。
2段目の存在を知らなければ、1段目登り切った後に「まだあるのか」という絶望感を味わえます。
存在を知っていたとしても、1段目に取り掛かる時に「これ登っても、直ぐ次のがあるんだよな」という絶望感が味わえます。どちらに転んでも絶望できるので、是非試してみてくださいね。
そして、この山も宿泊施設や避難小屋類はありません。山行に赴く際にはご注意ください。
ギャラリー
動画だと次のような感じです。
棒ノ折山
棒ノ折山も、前述の日向沢ノ峰と同じく、長沢背稜の尾根筋にある山で、東京都の奥多摩町と埼玉県の飯能市の間に位置している山です。主要な登山口が埼玉県の飯能市側にあるので住所は埼玉と思っていたのですが、こちらも東京都の西多摩郡奥多摩町大丹波になるようです。
また、山名についても東京側と埼玉側で異なっており、東京では棒ノ折山、埼玉では坊ノ尾根と呼ばれていようです。こちらも「公益社団法人日本山岳会 東京多摩支部HP」に記載がありましたので引用しておきます。
名栗側では坊ノ尾根と呼んでおり、昔からこの山はカヤトで有名で、毎年ここを火入れしてカヤを生い茂らせたそうだ。これに対し、大丹波側では石棒を祀った名残があり、それが名栗側の坊ノ尾根と混乱混同したのであろうという。
引用:公益社団法人日本山岳会 東京多摩支部HP
標高は969mと1,000mに届いておらず、比較的登りやすい初心者向けの山になっています。
実際、山頂には軽装な方や小さなお子様を連れた登山者が多数登っており、天候の良い昼時はいつも賑やかな場所となっています。
山頂からの眺望は、なかなかに素晴らしく北と東に大きく開けており、奥武蔵の山々や関東平野の街並みを眺めることができます。
登山に適した時期は春秋と夏。標高が低いので気温が高めですが、涼しい沢筋を通過する白谷沢コースは夏場にもおススメです。逆に凍結、積雪の恐れがある冬場は十分にアイゼンワークの経験を積んでから挑戦した方が良いかと思います。
主要な登山コースは以下の通りです。
- 有間ダムにある白谷沢登山口から白谷沢の沢筋を登るコース
- 有間ダム下流にあるさわらびの湯近隣の登山口から通常の登山道を登るコース
- 高水三山のひとつ岩茸石山から黒山を経由して登るコース
- 日向沢ノ峰から長沢背稜を東に向かって登るコース
おすすめは、やはり白谷沢登山口から白谷沢の沢筋を登るコースでしょう。帰路のバス内で出くわしたツアー客に同コースを降りてきたグループが居たようで、皆さん興奮気味に良かった点を話していました。
また、前日の雨で沢の水量が心配という場合は、通常の登山道を進むことになる、さわらびの湯近隣の登山口から登るコースがいいでしょう。状況により使い分けてみてくださいね。
ギャラリー
動画だと次のような感じです。
白谷沢の様子もおまけで載せておきます。
今回の山行ルートと危険を感じた区間
地図上の位置と標高
今回の山行で歩いた場所について、地図上の位置、標高です。
「Download file」のリンクからGPXデータとしてダウンロードできます。
ご自由にご活用ください。
最高点の標高: 1363 m
最低点の標高: 256 m
累積標高(上り): 1976 m
累積標高(下り): -2038 m
総所要時間: 08:55:47
歩いた軌跡
続いては、GPSデータを元にした軌跡です。
市販の地図
今回の山行ルートが掲載されている市販の地図も載せておきます。
本来であれば、国土交通省国土地理院のサイトから2万5千分の1地形図を購入、印刷して持参するのが正しい在り方ですが、毎回それだと面倒なので、紙面の地図は5万分1の市販地図をザックに入れて持って行くことにしています。
わたしの山行でのメイン地図はGPSアプリに移っており、紙面地図は予備扱いなため、今のところこの運用で困った事態には陥っていません。
ただ、読図の勉強をちゃんとしたい場合は、2万5千分の1地形図を購入した方が良いです。
5万分の1の等高線は荒すぎて地形把握には、ほぼ役に立たないのでご注意くださいね。
注意した方が良さそうな区間
今回、危険を感じたのは次の区間です。
山行の記録
ここからは、今回の山行について述べていきます。
アプローチ
今回のアプローチはJR奥多摩線「鳩の巣駅」からです。
川苔山に登るときの定番駅となりますが、今回もこの駅を起点に登山を開始していきます。
駅を出てすぐの場所にベンチと公衆トイレがあるので、そちらで見繕いしたら線路を渡って集落を北上、突き当りにある登山口から入山していきます。
ギャラリー
登山口~川苔山
登山口からは暫くザレた日陰の道が続きます。
途中、別ルートからの合流がありますが基本一本で登っていきます。
道の奥には大根ノ山ノ神の社があるのでご挨拶してから先に進みましょう。
少しだけ林道を進んだら、川苔山の山域に入っていきます。
まずは高い針葉樹林が生い茂る森林を進んでいきます。このあたりは傾斜も緩やかでとても歩きやすいでしょう。
徐々に広葉樹林の緑豊かな森林に様変わりしていき、木の階段が出現してきたことから、山道らしい傾斜になっていきます。
2度ほど、本仁田山への分岐を過ぎると、更に傾斜が上がって山頂が近いことを知らせてくれます。
そのまま、水場への分岐を越えて登っていくとベンチのある十字路にたどり着きます。ここを山頂側に曲がると最後の急坂が待ち受けていますが10分程度で登れてしまうので難儀することはないでしょう。
なだらかになった山道を歩いていくと山頂に到着です。
正面の眺望がとても良いので、軽く目で楽しんだらUターンして日向沢ノ峰へ向かうこととします。
ギャラリー
川苔山~日向沢ノ峰
川苔の山頂から降りたら、まずは古里駅方面へ向かい、その後に蕎麦粒山の方向への分岐に進んでいきます。
この方向は進む人は少なく、平日休日変わらずに静かな山行になります。
意外と眺望には恵まれていて、稜線上から近隣の山々を眺めることができますが、道が細いのでよそ見しすぎないように注意です。
途中にエスケープに使えそうな脇道がいっぱいあるのですが、軒並み台風で崩壊していて基本通行止めだと思っておけば間違い無いです。
日向沢ノ峰直下までは、降り方面となるので体力もそれほど消耗せずに進むことができるでしょう。
ただ、日向沢ノ峰直下の急坂はなかなか手強く、川苔山から向かった場合は2段階で登ることになります。1段階目が終わったところで気合を入れ直して登り詰めてしまいましょう。
日向沢ノ峰の山頂は非常に狭く、人ひとりが滞在できるぐらいしかありません。そんなに人は来ませんが、長期停滞していると明らかに邪魔になるので、写真撮ったらすぐに移動してしまいましょう。
ギャラリー
日向沢ノ峰~長尾ノ丸~槙ノ尾山~棒ノ折山
日向沢ノ峰の山頂からは、ほぼ降り坂です。
そいつは楽だと思うかもしれませんが、これがトラップです。
まずは、山頂直下の急坂の降り。ここはまあ余裕でしょう。
問題は長沢背稜への分岐を過ぎてからの急坂の降りです。
ここは、本当に骨が折れます。
滑りやすい粘土混じりの斜面を長いこと降ることになるので、体力だけでなく精神力が削られます。
急坂の降り坂の合間にある細尾根も厄介で、一歩間違えると大事故につながる恐れがあるので、気は抜けません。
今回は降雨の後ということで、この区間全域で滑りやすい状況となってましたので、集中状態を維持しつつゆっくり目に通過しました。
日向沢ノ峰界隈は、精神修行には良い場所なのかもしれません。
それでも長尾ノ丸山まできてしまえば、あとは疲れるだけの小規模なアップダウンのみです。淡々と足を運んで棒ノ折山山頂まで進みましょう。
棒ノ折山山頂に到着すると、14時を回っている時間でしたが、まだまだ多くの登山客が滞在していました。
ツアー客と思われる団体がレジャーシート敷いて談笑していましたので、邪魔にならないように停滞すること無く下山することとしました。
ギャラリー
棒ノ折山~有間ダム~国際興業バス停「ノーラ名栗・さわらびの湯」
棒ノ折山の山頂からは、白谷沢を降って有間ダムに向かいます。
ここからは沢筋を進むので、ぬかるみ道が続きます。
滑りやすいので注意が必要ですが、長沢背稜の降り坂ほどではありません。
途中で何度か沢を横断しますが、渡渉となるような本格的な場所は無いはずなので、もし進めそうに無い場所に出てしまったら、一旦引き返してもう一度しっかりと見渡すとテープが見つかったり、歩けそうなルートが浮かび上がってきたりするので、落ち着いて見渡す癖をつけてみてください。必ず突破口が見つかるはずです。
これはルートファインディングの練習にもなります。今後のためにも考えながら、楽しみながらし、少しずつ降っていくと良いでしょう。
鎖やロープをうまく使いつつ沢筋を降っていくと、自動車やバイクの排気音が大きくなってきますが、有間ダムに近づいている証拠です。
そのうち、山中に人の手が入った形跡が増えていき、最終的に有間ダムの周回道路に降りられます。
そこまで降りられたら、今度は右折して時計と反対周りに進み、ダムのえん堤を越えていきます。えん堤を越えたら、下流にある「ノーラ名栗・さわらびの湯」のバス停までは一本道です。
最後にアスファルトの降りで足に負担がきますが、ここで全ての行程は最後です。気合いで降りきってゴールしちゃいましょう。
ギャラリー
おまけ
今回は、コロナ禍の緊急事態宣言解除後ということで、やっと営業再開した温泉施設「さわらびの湯」に立ち寄ることにしました。
この施設は結構老舗で、棒ノ折に来たらほぼ必ずと言っていいほど寄り道させてもらっています。入り口に靴洗い場も用意してくれてて、登山者にも優しい施設です。
更衣所が少しこじんまりしているので、ザック類は休憩室に放置して貴重品だけ持ってお風呂に入るのが定番です。
さわらびの湯については、次の記事にまとめています。合わせて読んでいってくださいね。
そして、びっくりしたのが、お隣に「ノーラ名栗」という名前のグランピング施設が出来ていたこと。
キャンプエリアの他に、BBQエリア、プールエリア、イベント用の大会場なんかがあってファミリーやカップルに人気の出そうな今風の施設でした。
名栗も垢抜けてきましたね。
ギャラリー
まとめ
川苔山から棒ノ折山への縦走の様子でした。
折角の夏シーズン。甲信越の高山に目が向くことかと思いますが、遠出するには相応の準備や費用が掛かってきます。
そんなときには、近所の里山や沢筋を楽しんでみるのもお手軽で良いものですよ。
それではここまでお読みくださり、ありがとうございます。
コメント