快晴マークのついた11月中旬の週末。
山頂付近の紅葉は盛りを過ぎましたが、山の麓はまさに今が旬な奥多摩湖。
どうせなら湖面から湖畔の木々が色とりどりに染まった様子を眺めてみようと、麦山の浮橋に足を運んでみました。
一般客が普通に歩ける浮橋のある湖は、それほど多くはありません。
珍しい浮橋の様子に興味を引かれたあなたに満足してもらえる内容になっているかと思いますので、是非、最後まで読んでいって下さいね。
基本情報
まずは、今回の山行についての基本情報です。
概要
麦山の浮橋
麦山の浮橋は、東京都西多摩郡奥多摩町にある人工湖「奥多摩湖」に浮かぶ浮橋です。
以前はドラム缶を並べて作っていたのでドラム缶橋と呼ばれることもあります。
現在は、ポリエチレン・発泡スチロール製の赤い浮子を多数浮かべ橋状に繋げて対岸に渡れるようにしています。
このため、湖面の水位が足りなかったり、周辺工事の影響で急遽通行禁止になってしまうこともあります。
浮橋に赴くときは、東京都水道局のトピックスで状況確認を忘れないようにしてください。
浮橋は、乗るとき、降りるとき多少揺れますが、完全に乗っかってしまえば安定していて普通の橋とさほど変わりません。
ただ、橋からの眺めは珍しいもので、湖面とほぼ同じ高さから見上げる奥多摩の山々は、他の場所から見るよりも山深く見えるちょっと珍しいビュースポットとなっています。
特に紅葉の時期はおすすめで、紅葉に色づく山々の様子と青い湖面とのコントラストがあなたの目を、とても楽しませてくれるでしょう。
麦山の浮橋に公共交通機関を使ってアクセスする場合は、西東京バスで「小河内神社」停留所に向かうのが一番近く、奥多摩駅から出ている鴨沢行、丹波行、留浦行、小菅の湯行のいずれかの系統のバスに乗車して30分ほどで赴くことができます。
いっぱい系統があって覚えられないかも知れませんが、奥多摩駅バスターミナル「のりば2番」に並べば、ほぼ間違いなく向かうことができます。心配なときは、バスの運転手に聞いてしまうのが一番確実でしょう。
また、詳しいバスの発着時間は、西東京バスの乗換案内ページで事前に調べられます。URLを貼っておくので活用してください。
ちなみに、奥多摩湖には麦山以外にも「留浦(とずら)の浮橋」というのもあるので、間違えないようにしてくださいね。
ギャラリー
浮橋から周囲を見回した様子や、浮橋の上を歩いている様子をInstagramに上げていますのでよかったら見てみてください。
オツネの泣き坂
オツネの泣き坂は、奥多摩湖方面から三頭山山頂に伸びるヌカザス尾根の一画にある急坂地帯を指します。
坂自体は短いので気合入れて一気に登り切ってしまえばそれほど消耗はしませんが、勾配が急なだけでなく、足場がヌメっていて滑りやすいので、初心者向けに紹介されることの多い三頭山界隈では屈指の難所になっています。
そして、この珍しい名前の坂には、由来となる珍しい物語があります。
簡単にお話しすると、昔このあたりに住んでいた豪族に仕えていた女中のオツネさんは、近くで修行をする若い僧侶と恋仲になります。そのことを知った住職が、修行の妨げになってしまうと考え、山梨の遠いお寺に若い僧侶を修行に出してしまいます。
僧侶のことが忘れられないオツネさんは、夜な夜な山道を辿って、その僧侶に逢いに行くことにします。
険しい道中でしたが、無事に僧侶との逢瀬を終えることができ、急いで山道を引き返しますが、三頭山を過ぎたあたりで夜が明けてきてしまいます。
このままでは朝の支度に間に合わず旦那様に怒られてしまうと泣きながら駆け降りた坂が、この「オツネの泣き坂」だったというお話なんだそうです。
実際にこの坂を通過してみればわかりますが、女の子一人で夜の三頭山を駆け降りるとか、かなり無理のあるお話なんですけど、いろんな意味で突っ走ってるオツネさんが微笑ましく感じてしまうのは、わたしが齢50歳の爺様だからなんでしょうかね。
今回の山行ルートと注意が必要と感じた区間
地図上の位置と標高
今回の山行で歩いた場所について、地図上の位置、標高です。
「Download file」のリンクからGPXデータとしてダウンロードできます。
ご自由にご活用ください。
最高点の標高: 1532 m
最低点の標高: 332 m
累積標高(上り): 2415 m
累積標高(下り): -2618 m
総所要時間: 08:59:43
歩いた軌跡
続いては、GPSデータを元にした軌跡です。
市販の地図
今回の山行ルートが掲載されている市販の地図も載せておきます。
本来であれば、国土交通省国土地理院のサイトから2万5千分の1地形図を購入、印刷して持参するのが正しい在り方ですが、毎回それだと面倒なので、紙面の地図は5万分1の市販地図をザックに入れて持って行くことにしています。
わたしの山行でのメイン地図はGPSアプリに移っており、紙面地図は予備扱いなため、今のところこの運用で困った事態には陥っていません。
ただ、読図の勉強をちゃんとしたい場合は、2万5千分の1地形図を購入した方が良いです。
5万分の1の等高線は荒すぎて地形把握には、ほぼ役に立たないのでご注意くださいね。
注意した方が良さそうな区間
今回の注意したほうがよさそうな区間については次の点でした。
今回の山行での服装
今回の山行では、次のような服装の組み合わせを持参していきました。
同じ時期に赴かれるときの参考にして見てください。
- ベースレイヤー:半袖Tシャツ
- ミドルレイヤー:薄手の長袖Tシャツ
- アウター:薄手のフリース、ソフトシェル、レインウェア
- ボトムス:薄手の長ズボン、厚手のソックス
- その他:手ぬぐい、ネックゲーター、手袋
登山開始から下山まで半袖Tシャツでの活動となりました。
歩きはじめは、途中で長袖着ることになりそうなくらい肌寒さを感じましたが、正午に近づくにつれて身体も温まって気にならなくなりました。
ただ、午後に入ってからは風が出てきたことも影響してか、歩いていても日陰に入ると肌寒さを感じる山行となりました。
特に御前山で食事休憩をとった際には、流石に長袖Tシャツにソフトシェルを羽織っていないと寒くて鳥肌が立つ状況でした。
11月中旬ともなると、関東圏の低山でも半袖は厳しいかもしれませんね。
乗物移動のときは、半袖Tシャツ+薄手長袖Tシャツ+薄手フリース+ソフトシェルのモコモコ装備で、こちらは暑すぎず、寒すぎず快適に過ごせました。
今回の着合わせについて、具体的なウェアの名前やメーカーが知りたい場合は、次の記事が参考になるかと思います。
あなたがお持ちのウェアと比較して適宜プランニングしてみてくださいね。
山行の記録
ここからは、今回の山行について述べていきます。
アプローチ
今回の山行は、麦山の浮橋を渡った後に三頭山、御前山と経由して奥多摩駅まで歩いて帰ることでバス代を浮かせてしまおうプランにしたので、浮橋に一番近い西東京バスの停留所「小河内神社」からスタートすることにします。
東京駅からの乗り継ぎは、JR中央線で立川駅まで、その次はJR青梅線で終点青梅駅へ、そして奥多摩線で終点奥多摩駅まで向かい、最後に西東京バス小菅の湯行に乗って「小河内神社」停留所向かうという流れになります。
「小河内神社」停留所付近には、おトイレは無いので奥多摩駅で必ず済ませてからバスに乗り込むようにしてください。
麦山の浮橋は、「小河内神社」停留所の目の前です。周囲にはベンチの類は無いので、道端で見繕いを済ませてスタートしましょう。
ギャラリー
「小河内神社」停留所~ヌカザス山
早速、浮橋に向かって歩いていきます。
まずは、浮橋の浮かぶ湖面までの階段を降りて行きます。
浮橋は鉄筋製で安定はしていますが、最初の一歩は多少なりとも揺れますので、足元に注意して乗っかるようにしてください。
人二人分の幅があるので、対向者が来てもすれ違いに問題はありませんが、大きなザックを背負ながら写真とっていると邪魔になるかもしれません。
すれ違い、追越される時などには自分が「通せんぼ」してないか、周囲への気遣いを忘れないようにしたいですね。
浮橋を渡りきると少しの間、湖の縁の遊歩道を歩きます。
紅葉の時期はここの木々もキレイに色づいてくるので注目です。
その後は、車道に出て西方面へ向かいヌカザス尾根より三頭山山頂に臨みます。
ヌカザス尾根は、初っ端からなかなかの急坂なので、慌てず急がず、マイペースに標高を稼いでいきましょう。
尾根の途中にあるイヨ山山頂を通過して、徐々に細くなる尾根道を登っていくと、ヌカザス山山頂に到着です。ここの山頂も、展望が得られないので休憩は挟まずに通過してしまって差し支えありません。
そして、ここから奥多摩でも屈指の急坂区間、オツネの泣き坂に突入です。
ギャラリー
ヌカザス山~オツネの泣き坂〜御堂峠〜三頭山
奥多摩にも、北アルプスや南アルプスと同じように三大急登というのがあります。
今は通行止めとなってしまった鷹ノ巣山の稲村岩尾根を筆頭に、本仁田山の大休場尾根、六ツ石山の水根トオノクボ間の三つを指してそのように言われています。
三頭山屈指の急坂地帯「オツネの泣き坂」は、これら三大急坂に匹敵すると言う人もいるくらい厳しい急坂区間となっています。
ヌカザス山を降り、何回かのアップダウンを繰り返すことで、この「オツネの泣き坂」に入ることになります。
急勾配もさることながら、足元が滑りやすく晴天続きで乾いているはずの日でもヌルっと滑るので、純粋に体力だけを削られるのでは無く、精神的にも疲れます。唯一の救いは区間が短いので一息に登りきれるところでしょうか。
そんな、心身ともにガリガリと削ってくる急坂を登りつめれば、後は三頭山山頂まではなだらかな尾根道が続きます。
途中に出くわす、鶴峠方面への分岐や作業道への分岐を通過していくと、三頭山山頂付近の交通の要所「御堂峠」に到着します。ここまで来てしまえば後はひと登りです。一気にスパートしてしまいましょう。
三頭山は三つの山頂を持つ山ですが、其の中でも西峰が一番眺望に優れていますので、まずはそちらへ向かいます。
西峰からは、北面至近に横たわる石尾根の山々、南面から見える富士山の眺望が楽しめます。どちらもとても素晴らしい眺めです。三頭山に登る場合は、何はともあれ西峰に向かうとシアワセになれる確率が上がります。
逆に最高地点となる中央峰や東峰は木々に囲めれて展望は望めませんので、疲れているときは巻道で回避してしまっても問題無しです。
ただ、東峰から少し降ったところにある展望台からは、御前山や大岳山への眺めが期待できるので、そこだけは外さないようにしましょう。
ギャラリー
三頭山~鞘口峠~月夜見第二駐車場~小河内峠
三頭山の山頂たちや展望台からの眺めを堪能したら、御前山への縦走路に入って行きます。
まずは、三頭山界隈から脱出するため鞘口峠まで降下していきます。
真っ直ぐに登山道を降るのが一番早いルートでしたが、山の麓は紅葉真っ盛りだったこともあり、途中までブナ林の中を九十九折りに降りていくことにしました。
山頂付近はすっかり枯れ落ちていた葉っぱも、標高が下がるにつれて徐々に色味を取り戻して、色鮮やかな様子を楽しませてくれました。
鞘口峠を通過し、風張峠に差し掛かったところで今回は車道を進んでみることにします。
流石は紅葉シーズン、行き来する車やバイクの数が半端ありません。ここにロードバイクも加わって、まるで都内の車道を歩いているかのような交通量でしたが、山道に比べてアップダウンが少なく思っていたよりも早く月夜見第二駐車場に到着できました。
この区間、月夜見山のピークを踏まないのであれば、車道を進んでしまうのも良い手なのかも知れません。
月夜見第二駐車場からの急坂を降ったら、小河内峠まではアップダウンの穏やかな山道が続きます。
正確には、二つ三つ小高い丘を越えていくことになるのですが、どの丘も巻道があり上り下りの負担を軽減できます。初回こそルート把握のために尾根沿いを進んでも良いですが、道程を把握した後は巻道を通過して体力温存に努めるのが良いです。
小河内峠からは、木々の間から辛うじて奥多摩湖が確認できます。ベンチも2つほどあるので、この後に控えた急坂と細尾根に備えて一息入れると良いでしょう。
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小河内峠~惣岳山~御前山
ここから惣岳山に至るまでの区間は今回の山行の中ではヌカザス尾根に続いて、二番目にきつい区間となります。
まずは、二段階になっている急坂を登って行きます。
ここに至るまで結構な距離を歩いてきているので、ここに来ての急登は思ったよりも足に効いてくるので、急がずゆっくり歩みを進めるようにしてください。
二段目の急坂が終わった頃に、警告を示す立て看板が現れます。
ここからは、勾配はさほどではなくなりますが、奥多摩側が切れ落ちた崖となっている危険区間に突入します。
危険と言っても、慎重に進めば問題無く通過できるので、よそをしないで足元を注視しつつ通過するようにしましょう。
細尾根区間を通過してしまえば、後は登り一辺倒に登ることで惣岳山山頂に到着です。
ベンチが多数ある平坦な場所なので一息つきたくなりますが、ここまでくれば御前山は目と鼻の先です。
ここで気合を入れ直して、御前山まで登り切ってしまいましょう。
御前山山頂は、かなり広い平坦な広場になっています。ベンチも多く設置されているので、北面の石尾根を眺めながら少し長めに休憩を入れると良いでしょう。
ギャラリー
御前山~鞘口山~大ダワ~弁天橋~JR「奥多摩駅」
御前山でしっかりと休みをとったら、ここから奥多摩駅までノンストップで降下して行きます。
ただ、大岳山への登り返し地点となる大ダワに至るまでの降り区間は傾斜が急な上に、岩や木の根で足元が不安定な状態が続きます。
足を取られて転倒するとケガに繋がり行動不能に陥るリスクがありますので、駆け降りることなく一歩ずつ確実に足を降ろして進むようにしてください。
大ダワからは、今回初の試み林道鋸山線を降って、奥多摩駅まで歩いてみることにします。
鋸山から愛宕山に至る鋸尾根をよりも標準コースタイムは10分ほど長く、結構な距離の林道を歩くことになりますが、一度は歩いてみたかったのでいい機会となりました。
歩いてみた感想としては、道がとても整備されている点が印象的でした。
麓の弁天橋に至るまで、枯れ葉や落石による小石は多数落ちてはいましたが、アスファルトが割れていたり、沈没していたりといった足を取られる箇所は皆無に近く快適に踏破することができました。
紅葉の時期も手伝って、周囲の風景も飽きることなく楽しみながら進めましたが、それでも、あの長い林道をもう一度歩くとなるとちょっと躊躇してしまうかも知れません。
弁天橋まで降り切ったら、車道を通って奥多摩駅まで進みます。
南氷川橋、氷川大橋と渡れば駅は間近です。
奥多摩の役所前の十字路を左に折れれば奥多摩駅に到着です。
駅でおトイレを済ませたら、後は電車に乗って帰るだけですが、トイレ前には靴の洗い場があります。
ここで、靴の泥を落としてから電車に乗り込む気持ちの余裕があると近いうちにシアワセになれると思います。是非、心に余裕を持ちつつ気持ちよく帰路についてくださいね。
ギャラリー
まとめ
紅葉本番の11月中旬の奥多摩湖の様子でした。
奥多摩湖に掛かった浮橋は、今回渡った麦山の他にもう一つ留浦にもあるようですが、麦山の方が揺れが少なく安定しているのでオススメです。
そして、紅葉時期に浮橋の上から麦山橋の方向を眺めると色鮮やかな山の様子が湖面に映って、とても素敵な眺めを楽しめました。
浮橋を渡って湖畔に沿って伸びる「奥多摩湖いこいの路」を散策して帰ってくるだけでも、結構楽しめるかも知れません。
今回の記事で、更に興味を持ってもらえたら、是非、一度訪れてみてくださいね。
それでは、ここまでお読みくださりありがとうございます。
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