書評|米田一彦著「人狩り熊 十和利山熊襲撃事件 (つり人社)」

タイトルが非常にショッキングでひと目を引く本書。

2016年5月から6月にかけて、秋田県鹿角市十和田大湯に在る十和利山の麓で発生した熊害

「十和利山熊襲撃事件」について現地調査を続けてきた、NPO法人日本ツキノワグマ研究所理事長・米田一彦氏が取りまとめたノンフィクション作品です。

山菜採りのために山に入った男女4名が死亡、4名が重軽傷を負うという大規模な被害を被った同事件の詳細を知ることで、関東圏にも生息しているツキノワグマについての習性を把握し、山行の際の熊よけ対策に活かせればと考えて手に取ってみました。

本記事では、同書の内容や読んだ感想に加えて、十和利山熊襲撃事件の概略について解説していきます。

目次

基本情報

引用:「人狩り熊 十和利山熊襲撃事件」

まずは、本書の基本情報です。

書籍の基本情報

題名:人狩り熊(ひとかりぐま)

著者:米田和彦

出版社:つり人社

発売日:2018/05/01

ジャンル:ノンフィクション

媒体:電子書籍(Kindle)

本の長さ:272ページ

概要

本書の内容

2016年5月から6月にかけて、秋田県鹿角市十和田大湯に在る十和利山の麓で発生した熊害「十和利山熊襲撃事件」について現地調査の内容とツキノワグマ専門家である著者の検証と考察をまとめたドキュメンタリーとなっています。

全体は4章に章立てされており、第一章として、犠牲者の遺族や目撃者、襲撃からの生還者といった関係者達の証言をベースに当時の状況を時系列に解説していきます。

第二章では、NPO法人日本ツキノワグマ研究所理事長としての著者が、この事件に際してどのような情報発信や注意喚起を促してきたかが述べられています。

第三章では、食害に参加したと考えられるツキノワグマ達の特徴が語られます。

主犯格と想定するオスのツキノワグマ「スーパーK(出没地鹿角市=かずのの頭文字を取った模様)」や、3頭子連れのメス「赤毛クマ」といった野生のツキノワグマをメインに、それらと血縁関係にあると思われる熊達の生態、討伐されるまでの顛末まで詳しく語られています。

そして最終章で事件の発生原因を、専門家である著者の視点で検証し、その結果報告で締めくくられるといった内容となっています。

十和利山熊襲撃事件

十和利山熊襲撃事件とは、秋田県鹿角市十和田大湯の十和利山山麓で起こったツキノワグマによる食害事件です。

被害の規模は、死亡者4名、重軽傷者4名と国内史上3番目に多く、加えて、食べる目的で人を襲うことは無いと言われていたツキノワグマが食害目的に加害したということで、多くの人に衝撃を与えました。

発生した時期は、未開発地区の多かった明治や大正といった戦前では無く、2016年と比較的最近に起こっており且つ、主犯格となる熊が正確に特定されていないことから、食害に参加したかもしれない熊が未だ生存しており、再発の可能性を残したまま不安が残る結末を迎えたようです。

このため、事件終息後も現地行政機関では、山菜採りのシーズンに合わせた定期的な情報共有や熊害を未然に防ぐための対策検討会議を設け、事故防止のための活動を続けているようです。

著者「米田一彦」

著者の米田一彦氏は、半世紀に渡ってツキノワグマの生態を負い続けたツキノワグマの専門家です。

今までに3000頭の熊と遭遇し、8回襲われたと公の場で発言しています。多少の誇張があったとしても、一般人に比べて遥かに多く熊の生態を観察してきていることになりますね。

NPO法人「日本ツキノワグマ研究所」の理事長も努めており、公演活動や実態調査などの活動を積極的に行っています。

著:米田 一彦
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本書を読んだ感想

引用:「人狩り熊 十和利山熊襲撃事件」

幸運にも、わたしは山中で熊に遭遇した経験は無いので、実際に熊と鉢合わせしてしまった人々の証言が聞けるというのは、とても貴重な知識となりました。

特に、熊と鉢合わせてしまって命がけで撃退した方々の事例は、万が一、山中で熊と遭遇してしまった場合の対応策としてしっかりと頭に入れておいたほうが良い内容だと思います。

具体的には、以下のような点が読み取れました。

  • ザックやストックなどを振り回して自分の体を大きく見せることは有効
  • 木々や岩と重なって無機物のフリをしてやり過ごすことは有効

また、熊専門家である著者は死んだふりもある程度有効であることを述べていて、こういった点も参考となりました。

著:米田 一彦
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まとめ

米田一彦著「人狩り熊 十和利山熊襲撃事件 」に関する内容でした。

このようなドキュメント作品は、世間一般に言われている習慣や対策の中で、根拠無く言い広げられた事象を正してくれる、貴重な情報源になりえるため、機会があれば読んでおくに限ります。

ただし、その根拠も本当に正しいのかというのは著者本人にもわからないといった場合も十分あり得るので、100%鵜呑みにせずに同類の書籍を数冊読んで傾向を掴むようにしておくと安心かもしれませんね。

それでは、ここまでおよみくださりありがとうございます。

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