登山で出くわしたくない怖い生き物クマ!遭遇しないための予防策とは

コラム

登山の最中に出くわしたら怖い生き物の筆頭に熊がいます。

熊は走ると時速40キロの車と同等のスピードが出せて、木登りも水泳も得意、力もとても強く、不意に出くわしてしまったら無傷で逃げおおせるのはとても困難といわれています。

このため、山中では熊に遭遇しないようにするというのが重要な点となってきます。

ここでは、熊の生態や習性、生息域などの情報を把握することで、熊との遭遇を回避するための対策を考察していきます。

この記事で解ること
  • 国内の熊の生態や生息域が解る
  • 熊に遭遇しないための予防策が解る
  • 過去に国内で発生した代表的な熊害が解る

熊の生態や生息域

引用:Unsplash

熊との遭遇を回避する上で、熊という生き物がどういう生き物なのかを知るのはとても重要です。そこで、まず最初に熊の生態や日本国内での生息域について解説していきます。

熊の生態

熊という生物は、2000万年前に食肉類と呼ばれる系統から分化して生まれたとされています。

食肉類というのは、ライオンやトラを含むネコ科の大型動物を主とした動物群で、他の動物を捕食して生きる動物のグループを指します。

これらの動物は、肉を食い破るために発達した犬歯、鋭いかぎ爪を持っており、熊にもこの特徴は引き継がれています。

しかし、分化後の熊の祖先は、食肉だけに留まらず植物も食べるようになり雑食化の道をたどることになります。

このことが、さまざまな環境への対応力を強める結果となり、広い生息域を持つ生物に進化させる要因となりました。

現在では、以下の8種類の熊が世界中に生息しています。

  • ヒグマ
  • ツキノワグマ
  • ハイイログマ(グリズリー)
  • ホッキョクグマ
  • アメリカグマ
  • ナマケグマ
  • メガネグマ
  • ジャイアントパンダ

日本国内での熊の生息域

世界中に生息している熊ですが、国内ではヒグマ、ツキノワグマの2種類のみが生息しています。

この2種類の熊の生息域ですが、ヒグマは北海道、ツキノワグマは本州と四国の山地を中心に生息しています。

これは、日本の国土のおおよそ4割の広範囲に渡っており、人間の生活圏と重なる部分も存在しています。

このため、餌の少ない年などに農地や集落まで降りてきた熊が、家畜や農作物を荒らしたりといった熊害を発生させています

そして、人間を襲って殺害するといった事例も少なからず発生しています。

引用:環境庁「熊に注意!」(画像切り取り)

国内に生息している熊の特徴

このように広範囲に生息し被害を発生させている熊ですが、国内に生息している2種類でそれぞれの特徴はどんな点になるでしょうか。

ここからは、それぞれの熊の特徴について述べていきます。

ヒグマの特徴

まずは、北海道に生息しているヒグマの特徴について述べていきます。

主な特徴は以下のとおりです。

  • 大きさ:オス2~3メートル、メス1.5~2.5メートル
  • 体重:オス250~500キログラム、メス100~300キログラム
  • 生息域:北海道
  • 環境:森林部

ヒグマは世界中に生息していて、うちエゾヒグマという種類が日本国内に生息しているヒグマを指すことが多いです。

そして、このエゾヒグマは日本に生息している陸上の生き物では最大最強を誇り、食物連鎖の頂点に君臨しています。

エゾヒグマは、単独で活動することが多く、雑食で植物や果実のほかに昆虫、魚、小動物なんでも食べます。人間も例外とはなりません。

また、自分で捕獲した獲物に強い執着心を持つ傾向があり、奪おうとすると襲ってくるといった危険な行動をとります。

唯一の弱点は視力が弱いといった点ですが、優れた聴覚、嗅覚を持つため遠くからでも獲物を察知できると言われています。

ツキノワグマの特徴

続いては、本州と四国に生息しているツキノワグマについて述べていきます。

主な特徴は以下のとおりです。

  • 大きさ:1.0~2.0メートル
  • 体重:65~150キログラム
  • 生息域:本州、四国
  • 環境:山地、森林部

ツキノワグマは、其の名前の由来となる胸の白い三日月模様が特徴の熊です。

ツキノワグマも雑食で、植物や昆虫などを食べます。木登りが得意なこともあり木に登って木の実を食べるといったこともします。

ただ、ヒグマと異なり食べる目的で人間を襲うことはほとんどありません。しかし、出会い頭に出くわすと驚いて襲ってくる場面もあります。

特に注意が必要なのは、春先に冬眠から目覚めた子連れの熊です。空腹な状態獰猛となるので注意する必要があります。

昔は九州方面にも生息していたようですが、現在はほとんど確認されていません。

熊に遭遇しないための予防策

引用:Unsplash

ここまで、日本国内に生息している熊の生態や特徴について解説してきましたが、国内の熊がどのような生き物か把握いただけたでしょうか。

ここからは、熊に遭遇しないためにはどのような予防策を取るのがよいかという点を5つのポイントから述べていきます。

熊に遭遇しないための5つの予防策
  • 熊の習性、特徴を把握する
  • 熊の生息域、出没場所を把握する
  • 自身の存在をアピールする
  • 周囲の状況に気を配る
  • 食料や残飯の管理を徹底する

熊の習性、特徴を把握する

熊に遭遇しないための予防策の1つ目は「熊の習性、特性を把握する」です。

このページでも述べているとおり、事前に熊の習性、特徴を把握しておくことで熊を刺激し襲われるような自体を避けられると考えます。

例えば、森林部に生息しているという情報から見通しの悪い林間部の歩行、特に春先の冬眠から覚める季節には、周囲に気を配って行動することで遭遇する確率を減らすことができるだろうと考えます。

熊の生息域、出没場所を把握する

熊に遭遇しないための予防策の2つ目は「熊の生息域、出没場所を把握する」です。

これから出向く山域での熊の生息域を把握したり、最近、熊を見かけたといった情報を把握したりすることも予防に有効です。

特に直近での目撃情報は重要で、そういった場所にはたとえ複数人であっても極力立ち寄らない注意が必要です。

以下、関東圏限定となりますが、各自治体が発表している目撃情報について掲載しておきます。

なお、2020年12月時点では千葉県に熊の出没情報はありません。

自身の存在をアピールする

熊に遭遇しないための予防策の3つ目は「自身の存在をアピールする」です。

熊は聴覚、嗅覚に優れるという話をしました。この特徴を利用して、熊鈴や匂いの出る蚊取り線香などを身につけ、自分の存在をアピールし熊野法から避けてもらうといった対策も有効となってきます。

このあたりの内容については、以下の記事でも解説しています。合わせてご覧ください。

周囲の状況に気を配る

熊に遭遇しないための予防策の4つ目は「周囲の状況に気を配る」です。

見通しの悪い林間部などを歩く際には、足跡やフン、木々に対する爪の跡、物音など周囲に対して気を配ることも大事な予防策となります。

そして、熊の形跡を発見したら興味本位に近づかずに身を引くことが大事です。

君子危うきに近寄らずを地で行くようにしましょう。

食料や残飯の管理を徹底する

熊に遭遇しないための予防策の最後は「食料や残飯の管理を徹底する」です。

熊は嗅覚に優れているので、食料や残飯の匂いにも敏感です。

このため、匂いの強い食材などはジップロックに入れて持ち運ぶなどといった工夫も遭遇を未然に防ぐためには大事になってきます。

そして、一度このような食料に味をしめてしまった熊は再度、同じ場所に出てくるようになり、新たな被害を発生されることになる恐れが出てきてしまいます。そのようなことを防止するためにも、食料や残飯の管理はしっかりするようにしましょう。

過去に国内で発生した三大熊害

引用:Unsplash

最後に、過去に国内で発生した熊害のなかでも規模の大きい3つの事件について紹介します。

過去発生した国内三大熊害
  • 三毛別羆事件
  • 石狩沼田幌新事件
  • 十和利山熊襲撃事件

三毛別羆事件

まずは、日本史上最悪の熊害と呼ばれる三毛別羆事件について紹介します。

この熊害は、1915年(大正4年)の12月9日から14日の6日間にわたり、当時の北海道苫前郡苫前村三毛別、現在の苫前町三渓六線沢で発生しました。

開拓村に現れたエゾヒグマにより、7名が死亡、3名が重症という大規模な被害を出した後、陸軍まで出動する事態にまで発展しました。

その動員人数は3日間でのべ600名。これにアイヌ犬10頭以上が加わり大規模な討伐隊が編成されましたが、最終的には山本兵吉という一人の熊撃ち猟師の手によって討ち取られて終息をみる結果となりました。

そして、当時は常識と言われていた「熊は火を恐れる」「木に登れない」「死んだふりをすれば立ち去る」といった数々の事柄を覆し、火の灯った民家に押し入って妊婦を食い殺したり、木の上に逃げた子供を追って駆け上り、そのままなぶり殺しにしたりと凄まじい残虐性を示したようです。

このことで創作意欲を掻き立てられた作家達により様々な小説や漫画などが発表され、名のしれた事件となっていったようです。

本事件を題材にした書籍も刊行されており、吉村昭著「熊嵐」や木村盛武著「慟哭の谷」はわたしも読んだことがあり、そこで語られる羆の残忍な行動に衝撃を受けて、少しの間、山中での物音に敏感になった時期がありました。

以下にそれぞれの書籍を読んだときの書評へのリンクを載せておきます。興味ありましたら、併せてごらんください。

石狩沼田幌新事件

続いては、記録の残っている獣害の中で日本史上2番と言われている石狩沼田幌新事件についてです。

この事件は、1923年(大正12年)の8月21日深夜から24日にかけて北海道雨竜郡沼田町の幌新地区で発生し、そこに住む開拓民だけでなく討伐に赴いた猟師達をも襲って計5名が死亡、3名が重傷を負う被害を発生させました。

ことの始まりは21日夜間に催されたお祭りで、このお祭りに参加していた若者一行が帰り道に出くわした羆に襲われ、一度は撃退したものの逃げ帰った民家にて再び襲われて数名の死者を出すことになります。

翌日、義憤に駆られたアイヌの猟師が討伐に向かいますが、残念ながら逆襲に会い、敢え無く殺されてしまいます。

最終的には、24日に到着した総勢300名に及ぶ大討伐隊により討ち取られましたが、その際にも数名の死者を出すなどして、激しく抵抗したようです。

大正時代は北海道への移民者が激増した時代です。このことが、もとは羆の生息域だった地域に人間が侵食し始める要因となり、大きな獣害に発展したのではないかと考えられています。

十和利山熊襲撃事件

最後の熊害は、十和田利山熊襲撃事件です。

この事件は先の2つとは異なり、本州で発生したものになります。

時期はごく最近の2016年(平成28年)5月から6月にかけて。場所は、秋田県鹿角市十和田大湯の十和利山山麓で発生しました。

山菜やキノコを採りに山に立ち入った人々を複数のツキノワグマが襲い、4名が死亡、4名が重傷を負う被害を出しました。これは、日本史上3番目になる規模の熊害で、本州では最悪の規模となっています。

そして、この事件の恐ろしい点としては、最終的に加害熊がはっきりと特定されないまま事件の幕引きが行われてしまったという点にあります。

このことを問題として、事件後の調査に携わったNPO法人日本ツキノワグマ研究所の米田一彦氏が自著「人狩り熊 十和利山熊襲撃事件」の中で真犯人となる熊の特定に挑んでいます。

興味がありましたら、手にとってみるのも良いでしょう。

著:米田 一彦
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まとめ

国内の熊の生息域
  • ヒグマ:北海道の森林部
  • ツキノワグマ:本州と四国の山地から森林部

熊に遭遇しないための5つの予防策
  • 熊の習性、特徴を把握する
  • 熊の生息域、出没場所を把握する
  • 自身の存在をアピールする
  • 周囲の状況に気を配る
  • 食料や残飯の管理を徹底する

過去発生した国内三大熊害
  • 三毛別羆事件
  • 石狩沼田幌新事件
  • 十和利山熊襲撃事件

現在では、普通に暮らしている限り出くわすことはほとんどありえない熊ですが、山中ではその限りではありません。

そして、過去には大規模な熊害を引き起こしているように凶暴で残忍な特性も持ち合わせています。

不意に出くわしてしまった場合、無傷でやり通せる確率はかなり低いものと覚悟する必要があります。

このため、山行の際には熊に遭遇しないための対策がとても重要となります。

今回述べた5つの予防策を参考に、熊に出くわしてしまうことの無いよう事前の対策を講じつつ楽しく安全な山行を行えるようにしてくださいね。

それではここまでお読みくださり、ありがとうございます。

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