一番多い山での遭難原因は「道迷い」ですが、それに次いで多い理由に「転倒」があります。
ちょっと転んだだけで大事故に繋がってしまうなんて、舗道が多く平地に均された街ナカに暮らしているとあまりイメージできないかもしれませんが、山中では事情が異なります。
場合によっては命を失うリスクを生じることとなります。
今回は、山で転倒してしまう原因から、転倒してしまった場合のリスク、転倒しないための予防策までを通して解説していきます。
山で転倒を誘発する5つの原因
それでは最初に、山で転倒を誘発してしまう5つの原因について述べていきます。
適切な歩き方をしていないのが原因
山で転倒を誘発してしまう原因の一つ目は「適切な歩き方をしていない」です。
いつも歩いている舗道と違って、山道には傾斜や凹凸が無数に点在していて足を取られやすいコンディションとなっています。
このため、舗道と同じ感覚、ペースで歩いてしまうと、バランスを崩したり躓いたりして転倒してしまう恐れがあります。
経験論的に述べると、足元に注意を向けずに大股で歩いたり、下り坂を駆け下りたり、人と競うように早足で歩いたりしたときに、足がもつれたり転倒したりという状況に陥ることが多かったです。
このように、山に見合った適切な歩き方をしていないことが、転倒の原因になりやすいと言えます。
体調不良や体力不足が原因
山で転倒を誘発してしまう原因の二つ目は「体調不良や体力不足」です。
これは山道に限らないかもしれませんが、体調が優れずに足元がフラついた状態や体が重い、ダルいといった状態で歩きつづけてしまうと、ちょっとした凹凸に足を取られて転倒してしまう恐れがあります。
また、自分の体力に見合っていないような急峻な道やロングコースに挑むことも、疲労困憊によって足元が覚束ない状況を生じて転倒を誘発してしまう恐れに繋がります。
このように、体調不良や体力不足というのも、転倒の原因になりやすいと言えます。
悪状況の山道が原因
山で転倒を誘発してしまう原因の三つ目は「悪状況の山道」です。
冗長になりますが、山道は傾斜や凹凸により不安定な足場になっています。
ここに降雨や降雪によって、泥濘や水たまり、土砂崩れなどが発生すると、更に歩きづらさが増して転倒しやすくなってしまいます。
このように、山道の状況が悪い中を歩くことも、転倒を誘発する原因になってきます。
装備の故障や破損が原因
山で転倒を誘発してしまう原因の四つ目は「装備の故障や破損」です。
正常に機能している装備を利用していても、歩き方や山道の状況で転倒してしまう恐れがありますが、そんな道を、故障や破損して正常に動作しない装備で歩いた場合どうなるでしょう。
例えば、靴底が捲れてグリップ力のなくなった登山靴や、解れたり破れたりして歩行の妨げになるズボンなどを使って歩いた場合、どんな状況になるかは少し想像力を働かせれば自ずとわかります。
このように、気が付かないまま正しく機能しない装備を用いて歩くことも、転倒の原因となります。
焦りや油断など精神状態が原因
山で転倒を誘発してしまう原因の五つ目は「焦りや油断など精神状態」です。
私としては、この点が一番大きいだろうと考えています。
バスの最終便が近づいてきて心に余裕がなくなってきた状況や、核心部を過ぎてホッと一息ついた段階など、心にスキを生じたとき転倒することが多い印象があります。
これは、体力に十分余裕があり、何十回と歩き慣れた山道でも例外にはなりません。
冷静な判断ができない精神状態というのも、転倒の大きな原因になってくるということです。
山での転倒で生じる3つのリスク
ここまで、山で転倒を誘発してしまう原因について述べてきました。
続いては、転倒してしまった場合、どのような危険なリスクが生じるかについて説明していきます。
ケガによる行動不能
山で転倒してしまった場合のリスクの一つ目は「ケガによる行動不能」です。
整備された舗道であれば、軽い擦り傷や打ち身程度で済むような状況でも、山道では異なります。
手をついた先がヤブの中や、尖った岩だったりすると深い傷が生じて出血が止まらなくなるリスクが生じます。
また、膝をついた場所が硬い石の上だったりすると、悪くすると膝の皿が割れたり、骨折したりして歩くことができなくなってしまいます。
短い距離であれば、接ぎ木などをして頑張って下山し救助を求めることもできるかもしれませんが、人の往来の少ないマイナーコースで下山まで数時間掛かるような場所で大怪我を伴ってしまうと、救助されるまで停滞を余儀なくされる恐れがあります。
このように、転倒したことで大怪我を起こし行動不能になってしまうというリスクが存在します。
装備や衣類の破損による所持品損失
山で転倒してしまった場合のリスクの二つ目は「装備や衣類の破損による所持品損失」です。
転倒に伴うリスクは、自分の体に対してのみということにはなりません。
転倒してしまうことで、衣類が破けたり、靴底が捲れてしまい修理や買い直しを余儀なくされるリスクも生じます。
登山用品は、高額なものが多いので買い直しとなると金銭的な損失も馬鹿になりません。
もし、ザックを引っ掛けて中身が散乱、消失してしまうような自体になってしまうと、それこそ何十万円というお金が飛んでいくことになります。
そして、これはお金だけの問題では終わらずに、愛着の湧いた品々が二度と戻ってこないという消失感にも繋がってきます。
このように、転倒したことによって金銭的、精神的な消失感を味わうこととなるリスクというのも存在します。
滑落、転落による落命
山で転倒してしまった場合のリスクの三つ目は「滑落、転落による落命」です。
これが極めつけのリスクになります。
落ちたらまず助からないような、断崖絶壁や細尾根を通過中に転倒してしまえば、そのまま命を失うことになります。
山で死ねれば本望なんてセリフも聞きますが、そんなことは嘘っぱちです。
自殺を目的とした入山以外は、死ぬことが本望なはずがありません。
心地よい汗をかきつつ、きれいな風景を眺めて、美味しいごはんを食べて下山する。このことで、日頃のストレスを軽減させるといったことが、山に入ることの本望なはずです。
少なくともわたしはそうです。
よって、滑落、転落による落命というのが、最後にして最大のリスクになると認識しています。
山で転倒を避けるための5つの予防策
それでは、最後となりますが、ここからは転倒を避けるための予防策について解説していきます。
以下、5つとなります。
山での歩き方を体で覚えておく
転倒を避けるための予防策の一つ目は「山での歩き方を体で覚えておく」です。
山で転倒を誘発する5つの原因の中でも述べましたが、山では山で歩くのに適した方法というのがあります。
この方法を守って歩くことで、転倒するリスクを軽減できます。
具体的には、
- 歩幅は細かくゆっくり目に歩く
- 太ももを上げすぎないようベタ足気味に歩く
- 下り坂でも駆け下りない
これらを守って歩くことで、ほとんどの転倒リスクを回避できます。
もし、イメージするのが難しいようでしたら、近くの公園で小一時間歩いてみるのも良いです。
日々の体調管理、体力維持を怠らない
転倒を避けるための予防策の二つ目は「日々の体調管理や体力維持を怠らない」です。
体調不良はその場だけ気をつけていても回避できません。
日頃から夜ふかしや暴飲暴食を控えて、健康に気をつけておくことをおすすめ致します。
また、体幹トレーニングやストレッチなども継続して行っておくと、バランス感覚を養うことができるので、更に転倒リスクを減らせます。おすすめです。
事前の情報収集を怠らない
転倒を避けるための予防策の三つ目は「事前の情報収集を怠らない」です。
現地のコンディションは、ヤマレコやヤマップなどの山行ブログサイトやTwitterを始めとしたSNSで確認するとリアルな情報を収集できます。
しかし、より確実なのは現地の山小屋や地域役所に直接電話で聞いてしまうことです。
このようにして、入山前に山道のコンディションを把握しておけば、予め歩きやすいルートに変更したり、特に気をつけて通過する必要のある場所の目星も付けやすくなります。
面倒くさがらずに、事前の情報収集は怠らないようにしましょう。
日々の装備へのメンテナンスを怠らない
転倒を避けるための予防策の四つ目は「日々の装備へのメンテナンスを怠らない」です。
永遠に壊れないものはこの世に存在しません。
特に登山道具は丈夫な作りになっていることから、乱雑に扱われることが多いのでキズが付きやすく、破損や故障に至る要因になりやすいです。
これが、家の中で気がつくのであれば良いのですが、山行途中で起こってしまうと厄介です。
特に登山靴の破損は、即、行動不能に陥ることとなりますので、山行から帰ったら装備のお手入れを忘れずに行うようにしましょう。
心に余裕を持って山行に臨む
転倒を避けるための予防策の五つ目は「心に余裕を持って山行に臨む」です。
人間、心に余裕が無いときは視野が狭くなりがちです。
山行中に視野が狭まってしまうと、ちょっとした木の根や段差を見落としてしまい転倒に繋がるリスクというのが増えていってしまいます。
そんなシーンでも、解決できる方法さえ把握できていれば、心に余裕が出てきます。
エスケープルートの把握や、ビバークできる予備装備の準備なども怠らないようにすることも大事です。
まとめ
今回は、山行中の転倒について、どんな原因で発生しやすいか、それはどのように回避すればよいかということについて解説してきました。
わたしも毎週のように山行に赴いているので、転倒したことは何度もあります。
それでも、遭難に至る大事故を起こしていないのは、今回述べた予防策を実践しているからこそです。
是非、あなたの山行にも取り入れて安全で楽しい山生活を満喫してくださいね。
最後に、過去発生した山岳事故を元に原因別の対策などをまとめた記事もあります。興味ありましたら、こちらも読んでいってくださいね。
それでは、ここまでお読みくださりありがとうございます。
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