2021年の富士山も9月10日に閉山し、主要ルートまでの直通バスも軒並み終了して行っていますが、「富士宮口五合目」停留所の手前にある「水ヶ塚公園」停留所までなら、路線バスを使って向かうことができるようです。
流石に富士山山頂まで行き来するには行動時間が足りませんが、途中の宝永山までだったら十分に行って帰ってこれる行動時間が確保できそうということで、今回歩いてみました。
シーズンオフ、富士山の雰囲気だけでも楽しみたいと思っているあなた向きのルートになっていますので、眺めていって貰えたら幸いです。
目次
基本情報
まずは、今回の山行についての基本情報です。
山行の基本情報
日付:2021/09/11
天候:雨のち晴れ
エリア:富士山エリア
コース概要:富士急バス停留所「水ヶ塚公園」~三合目「御殿庭中」~宝永第一火口~宝永山〜宝永馬の背~宝永第一火口~御殿庭上~一合目「御胎内」~富士急バス停留所「水ヶ塚公園」
難易度:体力☆☆、技術 ☆ 、危険☆
交通機関:
(往)JR「三島駅」から、富士急バスで「水ヶ塚公園」停留所へ
(帰)「水ヶ塚公園」停留所から、富士急バスでJR「三島駅」へ
概要
宝永山
宝永山は、富士山の南東部に存在している噴火口です。
山頂碑は、火口縁の最高地点となる標高2,693 mの地点に建っていて、巨大な方位盤を模した珍しい形をしています。
この火口は、宝永4年に富士山史上最大といわれる側火山が発生して、そのときに出来たことから宝永山と言われているようです。
当時、噴出した火山灰は房総半島にまで届いたようで、想像を絶する災害だったのだろうと思われます。以下、当時の様子をまとめた内閣府資料からの抜粋です。
新たに開いた宝永火口から噴出した火山礫れきや火山灰などの噴出物は、偏西風にのって静岡県北東部から神奈川県北西部、東京都、さらに100km以上離れた房総半島にまで降り注いだ。
引用:宝永4年(1707)富士山噴火 – 内閣府防災情報
さて、宝永山に話を戻します。
宝永山に至るための登山ルートは次の3つです。
宝永山にアクセスする方法
- 「富士宮口五合目」から六合目山小屋の分岐より向かう
- 「水ヶ塚公園」から森林地帯を経て向かう
- 御殿場ルート「大砂走り」の下山途中に立ち寄る
1番容易なルートは「富士宮口五合目」から向かうルートです。六合目の山荘脇から宝永山方面への分岐が出ているので、そこからアクセスすれば標準タイム2時間程度で登ることができます。このルートを使って宝永山経由で御殿場ルートを登っていくプリンスルートというバリエーションルートがありますので、主要なルートを制覇した後チャレンジしてみると、また違った富士山の様子が楽しめることでしょう。
続いては「水ヶ塚公園」から登っていくというルートです。このルートは宝永大噴火で分断されてしまった「須山登山道」を辿っていくもので、苔生す鬱蒼とした森林地帯から、巨大な花崗岩が荒々しい火口地帯まで変化に富んだ登山を楽しむことができます。
最後は「大砂走り」の下山途中に立ち寄るというルートです。「大砂走り」は下山路なので、一旦、登山路を使って「御殿場六合目」まで登ってから向かうということになります。このため、あくまでも御殿場ルートを下山するときのおまけ的な位置づけだと思って貰えれば良いかなと思います。
そして、山頂からの眺めも変化に富んでいて、南面には駿河湾や伊豆半島といった海への展望、北面に目を向ければ富士山頂へ続く御殿場登山道の長い軌跡、そして西面からは荒々しい宝永火口の様子、最後に東面には箱根や丹沢の山々や遠くに広がる関東平野への眺め、といったようにかなり欲張りな展望を楽しむことができます。最短2時間の山登りでこの眺めを楽しめるのは、かなりコスパが良いのではないでしょうか。
ギャラリー
以下は、下界に広がる雲海から富士山頂に向けての様子です。
こちらは、宝永第一火口の中腹でグルっとまわってみた様子です。
今回の山行ルートと注意が必要と感じた区間
地図上の位置と標高
今回の山行で歩いた場所について、地図上の位置、標高です。
「Download file」のリンクからGPXデータとしてダウンロードできます。
ご自由にご活用ください。
合計距離: 16374 m
最高点の標高: 2707 m
最低点の標高: 1447 m
累積標高(上り): 1613 m
累積標高(下り): -1614 m
総所要時間: 06:28:31
Download file:
climbing-record-20210911.gpx
歩いた軌跡
続いては、GPSデータを元にした軌跡です。
市販の地図
今回の山行ルートが掲載されている市販の地図も載せておきます。
本来であれば、国土交通省国土地理院のサイトから2万5千分の1地形図を購入、印刷して持参するのが正しい在り方ですが、毎回それだと面倒なので、紙面の地図は5万分1の市販地図をザックに入れて持って行くことにしています。
わたしの山行でのメイン地図はGPSアプリに移っており、紙面地図は予備扱いなため、今のところこの運用で困った事態には陥っていません。
ただ、読図の勉強をちゃんとしたい場合は、2万5千分の1地形図を購入した方が良いです。
5万分の1の等高線は荒すぎて地形把握には、ほぼ役に立たないのでご注意くださいね。
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ポチップ
注意した方が良さそうな区間
今回の注意したほうがよさそうな区間については次の点でした。
今回注意の必要を感じた区間
- 宝永第一火口から宝永山山頂までの区間:火山灰の降り積もった砂地で、登るのにも降るのにも苦労する区間です。特に降りに利用するときには、滑って転げ落ちないようにスピード抑え気味に歩くようにしましょう。
- 宝永山馬の背:火口から吹き上がる風で体を持っていかそうになる強風地帯です。薄着のまま滞在しているとどんどん体温を奪われ行動に支障が出る恐れがあるので、長期休憩は別の場所を予定しておきましょう。また、ウェアやザックカバーなどを飛ばされてしまうと回収は困難となるので、なるべく別の場所で脱着を済ませると良いです。
山行の記録
ここからは、今回の山行について述べていきます。
アプローチ
今回のアプローチですが、オフシーズンに突入したことで、富士宮五合目行きのバスが終了しているため「水ヶ塚公園」より登ることとしました。
東京から東海道本線に乗り込んで、JR「三島駅」で下車、富士急シティバス「水ヶ塚公園」行きで終点まで向かいます。
因みに、「水ヶ塚公園」までの場合はお得な往復チケットといったものは2021年9月の時点では存在していません。SuicaやPasmoで乗車してしまいましょう。
「水ヶ塚公園」までの乗車時間は1時間30分程度。おトイレは乗車前に済ませておくと良いですね。
「水ヶ塚公園」に着いたら停留所の長椅子で見繕いを済ませて出発しましょう。
公園内には、「道の駅」ならぬ「森の駅富士山」という施設があるのですが、始発で向かった場合は開店時間の前に到着となるので、興味ある場合は下山後に立ち寄ると良いでしょう。
宝永山への登山道は、路線バスで登ってきた富士スカイラインを横切った先にあります。横断歩道などはありませんので、対向車に注意しつつ向かうようにしましょう。
ギャラリー
宝永山登山口~御殿庭中(三合目)
登山道に入ると、森林地帯を歩いていきます。
最初のうちは勾配のない平地歩きとなるので、ウォーミングアップを兼ねて進むと良いでしょう。
「須山上り一合五勺」の案内を過ぎると、徐々に勾配が上がってきますが、息が上がるほどではありません。苔生す木々の様子を楽しみつつ登っていくことにします。
「二合」の案内を越えて「御殿庭(下)」まで来ると、段々と勾配がキツくなっていきます。
標高も上がって背の髙い木々が疎らになってくるので明るさを増していきます。
そして、「御殿庭中」を通り過ぎたあたりでパッと視界が開けます。
赤茶けた宝永山の山頂が見えてくるのもこのあたりからでしょうか。
目標地点が見えたことでテンションも上がってきますが、足元が崩れやすいザレた道に変わってきますので、体力の消耗を抑えるためにも、急がず騒がず、なるべく小刻みに登っていくようにしましょう。
ギャラリー
三合目「御殿庭中」~宝永第一火口~宝永山
急勾配のザレ道を登っていくと、火口の縁に到着します。
見晴らしの良い、吹きさらしの風の中を進む感じは稜線を歩くのに似ているかもしれません。
富士宮口方面への視界も開けて、六合目の小屋を遠目に捉えつつ徐々に高度を上げていきます。
「第二火口縁」「第一火口縁」と進んでいくと、「宝永第一火口」へ向かう道が現れますので、そちらの方向へ折れて進んでいきます。
大きな火山岩がゴロゴロとした火口の中を横切って宝永山山頂に向けての長いザレ道を上り詰めると、宝永山の山頂に到着です。
太平洋から噴き上がってくる強い風に晒される場所となりますが眺めは秀逸です。強風で体が冷え切ってしまわないように防風着を羽織って絶景を楽しむことにしましょう。
ギャラリー
宝永山〜宝永馬の背~宝永第一火口~御殿庭上
今回の目標地点「宝永山山頂」に登頂できましたので下山していきます。
同じルートをピストンするのも芸が無いので、少しだけ道をズラして降りていくことにします。
まずは、「宝永馬の背」に寄り道です。
今回歩いたルートのなかでも1番の強風地帯。なんどか、横からの突風に体を持っていかれながら前傾姿勢で進みます。
馬の背でも強風はかわらずなので、至近の富士山山頂を拝んだら停滞することなく火口まで降りていきます。
この日は人手が多く危なかったので、ザレ道を崩さないようにスピード抑え気味で降りました。
火口まで到着すると丁度13時ということもあって、多くの登山客がベンチ付近で昼食を取っていました。
ここで昼食を取るつもりでいましたが、すべてのベンチが埋まっていたので、休憩できそうな場所を探して更に降ることとします。
「第一火口縁」「第二火口縁」と通り過ぎて、「御殿庭上」方面へ降りていきます。
このあたりは、昭文社の地図によると滑りやすいとのことでしたが、別段、この場所だけが滑りやすいということでもないので、難儀することなく降下していきます。
「御殿庭上」まで降りてくると、風も弱まって気持ち良さげな秋晴れが広がってきたので、昼食はここでとることとしました。
おにぎりを食べつつ、山頂方面を眺めているとヘリコプターが飛来して、かなり長い間旋回していましたが、おにぎりを食べ終わるころには、沼津方面へ帰っていきました。
ギャラリー
御殿庭上~一合目「御胎内」~富士急バス停留所「水ヶ塚公園」
腹ごしらえが終わったところで、時計を見ると14時を指しています。
最終の一つ前のバスが16時なので、2時間で降下すれば間に合う計算です。
流石にここから双子山に寄り道して行くと時間オーバーしてしまいそうだったので、下り一合目「御体内」にだけ寄り道をして帰ることにしました。
「双子山」への分岐点「三辻」まで向かったら、そこから「水ヶ塚」へ方向転換して降っていきます。
「三辻」より下は、森林地帯に入っていくので少し薄暗いですが道は明瞭で迷う場所は特にありませんでした。
下り一合目となる「御胎内」に到着すると、洞窟の入り口がありました。
この洞窟の中が胎内の様子に似ていることから「御胎内」と呼ばれるようになったみたいです。
昔は中に入れたようですが、大雨により崩落してしまい、今では進入禁止となっているようです。
近くの説明文を読むと、中には木花咲耶姫の石像を祀った祭壇のある霊地だったようです。
「御胎内」でのご挨拶を終えたら、あとは「水ヶ塚公園」まで戻るのみです。
平坦な道を進み、朝登ってきた道と合流したら登山口に到着です。
バスの時間に余裕があったので、「森の駅富士山」でお土産の品々を眺めてから三島駅へ戻りました。
ギャラリー
おまけ
富士山方面の登山では、定番になりつつありますが、今回も「熱海駅前温泉浴場」に立ち寄って汗を流していきます。
この浴場は入浴料500円と銭湯並みの料金なのですが、歴とした掛け流しの温泉です。
熱海の温泉らしい熱っついお風呂が楽しめます。
浴槽も更衣室もこじんまりしてますが、多くは地元民でみなスピーディに入浴を済ませていくので密に感じることはほとんどありません。
ただ、シャンプーやらボディソープは無いので、フロントで100円支払って購入する必要があります。
利用回数も増えてきたので、そろそろ、シャンプーとボディソープを持ち込むこと検討しても良いのかもしれません。
ギャラリー
まとめ
オフシーズンの宝永山登山の様子でした。
宝永山は、独立峰富士山の中腹に位置していることもあり、天候に恵まれれば遮ることのない展望を楽しめる非常に恵まれたピークです。
また、火山口という特殊な姿は、それ自体が珍しく、赤茶けた特異な風貌も見ていて飽きません。
11月までなら「水ヶ塚公園」までの路線バスが通っているので、もし行ったことが無いようだったら、是非、一度足を運んでみて下さいね。
それでは、ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
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