国内標高2位、高山植物の宝庫である南アルプスの主峰「北岳」。
普段通りに行けば、時間的には結構な余裕があったはずなのですが、様々なアクシデントが重なり、最後の方は写真を撮る余裕もなく下山することになってしまいました。
今回は、そんなアクシデント続きの山行の様子となります。
登山をやってない方にはほぼ知名度ゼロの不遇な山ですが、山頂直下に広がるお花畑、沢あり岩稜ありの登山道といった感じに、実際にはとても登り甲斐のある魅力的な山です。
普段は宿泊しつつゆっくりと巡る山ですが、今回はテント担いでの歩行訓練の第二弾としてデイハイクできるか試してきてみました。
基本情報
まずは、今回の山行についての基本情報です。
概要
北岳
北岳は、山梨県南アルプス市にある国内2番目に標高の高い山です。
その高さは3,193mで、富士山との差は583mとなっています。
まったく関係は無いですが、都内一有名な高尾山の標高は599mなので、一位と二位との間にはこれに匹敵する標高差が存在することになります。ホントにまったく関係無いですね。本題に戻りましょう。
さて、「北岳」の名前の由来ですが、 白峰三山(しらねさんざん) の一番北の山なので「北岳」(きただけ)と呼ばれているという話が有力です。
白峰三山(しらねさんざん) とは、同じ稜線上に存在している「間ノ岳」(3189m)、「農鳥岳」(3189m)との総称で、この3,000mを越える山々を繋いで歩く「白峰三山縦走」という、骨のある魅力的な登山コースも存在しています。
山頂からの眺めは絶景の一言で、天候に恵まれていれば、北方面に仙丈や甲斐駒、南方面に間や農鳥、東方面に鳳凰三山と、南アルプスの秀峰たちを至近に眺めることができます。
加えて、遠く北や中央アルプスの山々や八ヶ岳、富士山も運が良ければ顔を出してくれることでしょう。
登山に適した時期は夏場です。夏場を逃すと3,000m級の標高は気温がガクッと下がります。何よりも、夏場を逃すと広河原までのバスが激減しますので、山行計画を立てるのにも苦労するかと思います。
主な登山コースは2つ。大樺沢の沢筋から八本歯のコルを経由して吊り尾根に乗り上げ南側から登っていくコースと、肩の小屋を経由して吊り尾根を北側から山頂に向かうコースのいずれかとなります。
岩登りの技術があればバットレスを直登するというコースもありますが、一般コースでは無いので、ここでは除外します。
下山後の温泉施設は芦安温泉が定番で有名です。バスを途中下車して汗を流してから帰路につくと良いでしょう。
ギャラリー
今回の山行ルートと注意が必要と感じた区間
地図上の位置と標高
今回の山行で歩いた場所について、地図上の位置、標高です。
「Download file」のリンクからGPXデータとしてダウンロードできます。
ご自由にご活用ください。
最高点の標高: 3194 m
最低点の標高: 1527 m
累積標高(上り): 1943 m
累積標高(下り): -1937 m
総所要時間: 10:13:18
歩いた軌跡
続いては、GPSデータを元にした軌跡です。
市販の地図
今回の山行ルートが掲載されている市販の地図も載せておきます。
本来であれば、国土交通省国土地理院のサイトから2万5千分の1地形図を購入、印刷して持参するのが正しい在り方ですが、毎回それだと面倒なので、紙面の地図は5万分1の市販地図をザックに入れて持って行くことにしています。
わたしの山行でのメイン地図はGPSアプリに移っており、紙面地図は予備扱いなため、今のところこの運用で困った事態には陥っていません。
ただ、読図の勉強をちゃんとしたい場合は、2万5千分の1地形図を購入した方が良いです。
5万分の1の等高線は荒すぎて地形把握には、ほぼ役に立たないのでご注意くださいね。
注意した方が良さそうな区間
今回の注意したほうがよさそうな区間については次の点でした。
山行の記録
ここからは、今回の山行について述べていきます。
アプローチ
今回はJR「甲府駅」から 山梨交通路線バスの始発に乗り「広河原」より歩き始めます。
バス始発時間がAM4:30ということで、甲府駅には前日入りして駅前で仮眠とりつつ時間まで過ごします。
広河原までは、バスに乗ってから1時間以上ありますので、中でも仮眠が取れますが山岳地に入ってからは車窓からの眺めも良いので、景色を眺めながら気持ちを登山モードに切り替えていくと良いでしょう。
広河原バス停前は、インフォメーションハウスが建っていて登山準備のハイカーたちで常に混雑しています。
ハウス内に綺麗なトイレがありますが、常に行列ができてますので、北岳方面に向かうのであれば、ここはスルーして吊り橋渡った先にある広河原山荘でおトイレを借りるのが手っ取り早いです。お気持ちに少額お包みしつつありがたくお借りすることにしましょう。
同山荘のベンチを借りて見繕いしたら出発です。
ギャラリー
広河原山荘~大樺沢二俣
広河原山荘からは大樺沢の沢筋に沿って進みます。
途中、木や鉄パイプの橋で何度か渡河を繰り返しながら徐々に上流に向かって登っていきますが、この日は、前日の雨で山道の至る所で水が溢れていました。
そして、大樺沢二俣までは穏やかな傾斜の森林歩きが続きますが、羽虫が少ないのにはびっくりしました。これも前日の雨の影響でしょうか。もしくは標高が高いから元々生息している量が少ないのでしょうか。低山に比べてこの点はすごく快適でした。
そんな感じに進んでいくと、あるタイミングから前方が開けて大樺沢上流の雪渓が見えてきます。
この辺りから傾斜がきつめになっていき、備え付けの簡易トイレが見えたところで大樺沢二俣に到着です。
非常に開けて気持ちの良い場所なので、最初の休憩ポイントにしている人も多いです。
朝食がまだの時は、ここで食べるのも良いかもしれません。
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大樺沢二俣~八本歯のコル〜吊り尾根分岐点
大樺沢二俣からは、文字通りに右俣、左俣の2つのコースに分岐します。
右俣コースは、 沢筋を外れて肩の小屋まで九十九坂を登り、山頂付近のザレた急坂を登っていくコースです。
左俣コースは、雪渓となる大樺沢の脇を進んで丸太階段区間を越えて八本歯のコルまで登り、以降はこちらもザレた急坂を山頂まで登っていくコースになります。
標高差から、右俣コースの方が楽という声がありますが、どちらに進んでもそこそこにキツいです。
今回は標準タイム的に短い左俣を進みます。こちらのコースからは、北岳のバットレスや反対側の鳳凰三山の様子などが見えるので、天候に恵まれるとキツさに見合ったご褒美が貰えるので、是非チャレンジしてみてください。
そして、八本歯のコルから先はザレ場を登っていきます。
このザレ場ですが、以前通ったときに比べて道が不明瞭になった感じが強いです。10年も前の話なので、記憶違いなのかもしれませんが、当時はもう少し鮮明に目印のペンキが付いていたように感じました。所々に白樺の丸太も立っているので、この丸太も目印に入れてコース取りしていくと良いでしょう。
ザレ場を登りきると、吊り尾根に合流します。ここまでこれば山頂もあと少しです。
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吊り尾根分岐点~北岳
ここからは尾根筋を北岳方面に登っていきますが、結構アップダウンがありますので気を抜かずに心して歩きましょう。
山頂は広く開けていて平坦な場所が多いので休憩しやすいですが、その分混雑しています。
特に山頂看板付近は撮影目的のハイカーでごった返すので、休憩するなら少し離れた場所を探してゆっくりすると良いでしょう。
天候に恵まれれば、間の岳から農鳥に続く白峰の稜線や、仙丈、甲斐駒、鳳凰三山といった南アルプスの秀峰達。北アルプスや中央アルプスの山々や富士山といった日本を代表する山々を見渡すことができきますよ。
ちなみに、今回は驚きの白さでした。
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北岳~肩の小屋~白根御池小屋
なんにも見えないので、滞在無しで早々に下山します。
同じコースを降るのは変化が無いので、今回は草すべりコースを降りて白根御池小屋の様子をみつつ広河原まで下山するコースをとります。
まずは、ザレた稜線を肩の小屋まで降ります。
肩の小屋から先は、歩きやすい尾根道を降っていくのですが、ここで雷を伴った強いにわか雨に出くわします。
このままずぶ濡れになって駆け下りてしまうことも考えましたが、雷が怖いので小屋に一時避難させてもらいます。
30分ほど停滞すると雨足衰えてきたので一応レインウェアを着用して降りていくことにします。
降雨直後ということで、道が滑りやすく思ったほどにスピードがでないままに降りていきます。
草すべりコースに入っても同様で、滑りやすく遅々と進まないペースで、この辺りから日帰りは厳しいかなという考えが頭をよぎり始めます。
ただ、いつものデイハイクと違って、今回はテント装備一式が背中にあります。
最悪の場合、広河原山荘でテント場借りて一泊することも可能ですが、まずは広河原まで降てしまって判断することにしました。
ギャラリー
にわか雨の様子はインスタの動画に上げてますので確認してみてください。結構激しいです。
白根御池小屋~山梨交通路線バス「広河原」
白根御池小屋から広河原までは、森林区間を歩いていきます。
この区間は初めて歩いたのですが、意外とアップダウンがあり木の根や砂利も多くて、なんだかとても歩きづらい印象です。
何度か滑って転びそうになりつつも、木や岩をつかみつつなんとか降下していったのですが、半分くらい来たところで、とうとう転倒してしまいました。
重い装備を背負って降りていたので、思っていた以上に足に負担がかかっていたのでしょう。
踏ん張りがきかずにゴロンと綺麗に前転してしまいます。
久々の大コケに思わず笑ってしまいましたが、対したケガも無く済みました。
代わりにザックが泥だらけ、傷だらけになってたので、このコが大怪我から守ってくれたのでしょう。ホントにありがたいことです。帰ったら綺麗に洗ってあげることにして、先を急ぎます。
ここからは、本格的に残り時間が厳しいので写真撮る手間も惜しんでガシガシと降りていきます。
そして、昭文社の地図で言うところの「白根御池小屋分岐」地点まできたところで残り10分。標準タイム的には20分の距離。流石に間に合わないかなと思いましたが、最後に坂がなだらかになったところで突っ走って、出発間際の最終バスに滑り込むことができました。
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おまけ
北岳をはじめ鳳凰三山など南アルプス登山の帰りは、芦安温泉に途中下車して汗を流していくのがルーティーンだったのですが、今回は最終バスということで芦安はスルー。竜王駐車場で下車して、竜王ラドン温泉という温泉施設に立ち寄ることにしました。
「竜王」で「ラドン」なネーミングがとても怪獣っぽくてあやしげですが、ラドンという名前は体内代謝を整える効用を持つ温泉成分の名前らしく、別段あやしくはありません。
古ぼけた昭和の赴きを残した施設の雰囲気も味があってなかなか良かったです。
最近流行りのサウナとか露天とかはありませんが、汗を落とすにはそれで十分。近所のお父さんたちと一緒に湯船でゆっくりしてから帰路につきました。
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まとめ
北岳デイハイクの様子でした。
雷雨にあったり、転倒したりと、個人的にはイベント盛り盛りの刺激的な山行でしたが、折角の南アルプス登山です。
もし、お越しになるなら、断然宿泊しつつのゆっくり登山がおすすめです。
ご来光まで拝めたら一生の思い出になるかもしれませんよ。
それではここまでお読みくださり、ありがとうございます。
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