9月に無事閉山となった富士山ですが、登頂にこだわらなければ楽しめる登山ルートがいくつかあります。
そんな中の一つ「御中道」を歩いてみました。
非常に展望に優れた遊歩道になっていますので、興味ありましたら、今回の記事を参考に訪れてみてください。
また、今回は吉田口登山道のスタート地点「北口本宮冨士浅間神社」から登り始めるルートを採りました。
通年いつでも歩けるコースですが、歩行距離が長めなので、相応の体力は必要です。
急登、危険箇所はほぼ皆無ですので、長期縦走の予行練習や足腰の鍛錬に使えるルートを探しているようでしたら、山行プランの一つとしてご検討ください。
そして、下山に用いた船津口ルートですが、通り掛かった奥庭荘スタッフの方々に車でピックアップいただいたため一合目までの道程となっています。
当日、送っていただいた方々へこの場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。
基本情報
まずは、今回の山行についての基本情報です。
概要
吉田口ルート(北口本宮冨士浅間神社 ~五合目)
吉田口ルートというと、富士スバルライン五合目が登山口との印象が強いですが、本来の登山口は、富士山の開山祭や閉山祭が開かれる「北口本宮冨士浅間神社」にあります。
「北口本宮冨士浅間神社」 より木々に囲まれた遊歩道を一合目となる「馬返し」まで歩き、そこから本格的な登山道を登って五合目「佐藤小屋」を通過、富士スバルライン五合目からの道と合流して、山頂に向かう流れとなります。
五合目までは通年通行可能ですが、五合目より上は9月の閉山に伴い閉鎖されます。実際に厚い板が設置されて、入り込むこともできないので注意して下さい。
吉田口ルートの歴史は古く、富士吉田市の公式観光HPの説明によると、少なくとも江戸時代から続く由緒ある登山道のようで、当時は登山者で賑わっていたようです。
しかし、富士スバルライン五合目開通後は、利用者も激減し物静かな山道といった赴きに変わってしまったとのことです。
江戸~明治時代にかけては「富士講」とよばれる富士山信仰を実践する人の多くがこの道から富士山頂を目指しました。
引用:富士吉田市観光HP「吉田口登山道」
因みに、「北口本宮冨士浅間神社」 の「冨士」が「富士」と違う点、気になりますよね。
「北口本宮冨士浅間神社HP」に「冨士」である3つの説という回答が掲載されていました。
いずれの説も、富士山頂は神聖な地と見なしているのが興味深いところです。
「御山の上に人は立てない」説
ウ冠の点を人に見立てて、本来禁足地であること、或いは尊い山である為人が 崇める(下から見上げる)山であることを表した
「神は見えない」説
点を神に見立てて(1とは逆に)、尊いご存在は目に見えないことを表した。(午王という札などにその配置の絵が描かれています。
「山頂は神域」説
ワ冠から下を8合目以下に見立てて、点の示す山域は、神の土地であることを表した。
引用:北口本宮冨士浅間神社HP「冨士がワカンムリなんはなぜですか?」
五合目より上の吉田口ルートについては、過去の山行記録にまとめてます。気になりましたら、以下のリンクより確認下さい。
ギャラリー
撮影場所は少しずれてしまいますが、佐藤小屋と富士スバルライン五合目の中間地点の眺めです。山中湖がキレイにみえるのが印象的です。
御中道(スバルライン五合目~御庭)
御中道は「おちゅうどう」と読み、富士山中腹を一周する修験の道です。
当時は、「富士山を三度登頂したものだけが歩くことを許される最上級の修験道」だったようですが、現在では落石や崩壊による危険から四分の三は通行禁止状態のようです。
現在、御中道と呼ばれる区間は、冨士スバルライン五合目から奥庭までの区間で、遊歩道として整備されて観光客向けに一般開放されています。
そして、遊歩道からの眺めは大変素晴らしく、至近に聳える冨士の山頂は無論のこと、眼下には水を湛えた富士五湖と外環に立つ御坂山地や天子山地の山々、遠くに目を向けると甲州盆地の町並みや南アルプス、八ヶ岳の高山達を見通すことができ、非常に満足度の高い天空散策を楽しむことができます。
富士山五合目総合管理センターでは、御中道散策のための無料ガイドをお願いすることができるようなので、興味があれば以下のURLから確認してみてください。
なお、御庭より西側「大沢崩れ」に通じる区間は2021年9月時点で通年通行禁止です。
特にバリケードがされているわけでは無いので、入り込むことはできそうですが、危険ですので止めておいたほうが良いでしょう。
ギャラリー
Instagramにも動画を上げてますので、現場の雰囲気楽しんでもらえたら幸いです。
今回の山行ルートと注意が必要と感じた区間
地図上の位置と標高
今回の山行で歩いた場所について、地図上の位置、標高です。
「Download file」のリンクからGPXデータとしてダウンロードできます。
ご自由にご活用ください。
最高点の標高: 2363 m
最低点の標高: 806 m
累積標高(上り): 2238 m
累積標高(下り): -1834 m
総所要時間: 09:40:42
歩いた軌跡
続いては、GPSデータを元にした軌跡です。
市販の地図
今回の山行ルートが掲載されている市販の地図も載せておきます。
本来であれば、国土交通省国土地理院のサイトから2万5千分の1地形図を購入、印刷して持参するのが正しい在り方ですが、毎回それだと面倒なので、紙面の地図は5万分1の市販地図をザックに入れて持って行くことにしています。
わたしの山行でのメイン地図はGPSアプリに移っており、紙面地図は予備扱いなため、今のところこの運用で困った事態には陥っていません。
ただ、読図の勉強をちゃんとしたい場合は、2万5千分の1地形図を購入した方が良いです。
5万分の1の等高線は荒すぎて地形把握には、ほぼ役に立たないのでご注意くださいね。
注意した方が良さそうな区間
今回の注意したほうがよさそうな区間については次の点でした。
山行の記録
ここからは、今回の山行について述べていきます。
アプローチ
今回は、吉田口ルートを「北口本宮冨士浅間神社」から登ってくルートを採ったので、富士急線「富士山駅」で下車、駅前から徒歩でスタートとなります。
ここで注意事項。富士山駅は隣接するトイレが無いので、改札出る前に済ませておく必要があります。
無くは無いのですが、駅ビルやバス案内所の中にあるため、午前8時前の早い時間にスタートする場合、開館しておらずに使うことができません。
駅に一番近いコンビニも10分は歩くことになるので、改札を出る前に忘れずにトイレに立ち寄りましょう。
見繕いは改札出て直ぐの待合所で済ませてしまえば、とても捗ります。
準備整ったら、バスロータリー方面へ向かってスタートしましょう。
ギャラリー
富士急線「富士山駅」~北口本宮冨士浅間神社〜吉田口遊歩道~馬返し
富士山駅をスタートしたら、交通案内に従って「北口本宮冨士浅間神社」に向かいます。
朝早い時間であっても、交通量の多い道路を歩くことになるので、不用意に車道に踏み出したり、信号無視するようなことが無いようにしましょう。
「北口本宮冨士浅間神社」 に到着したら拝殿まで向かいます。
拝殿の向かって右手に進むと登山口がありますが、何はともあれ、富士の女神「木花咲耶姫」に忘れずにご挨拶してから向かいましょう。
登山口を通過して、しばらく進むと右手に吉田口遊歩道の入口の看板が出てきます。
ここから「馬返し」まで、登山道(車道)と遊歩道(山道)の2つの道が平行で伸びていますので、いずれか好きな方の道を使って進みましょう。
ギャラリー
馬返し~ 五合目「佐藤小屋」~富士スバルライン五合目
「馬返し」からは本格的な山道に入ります。
木々の中を進む物志津かな雰囲気の中を進むことになりますが、しっかりと整備が行き届いていて危険なところはほぼありません。
勾配もそんなにキツくないので、普段から体を動かしているようなら疲労困憊するようなことは無いでしょう。
また、昔の山小屋だった廃屋や、山小屋の立っていた跡地などには案内板が設置されていて歴史を感じながら登っていくのも楽しいかもしれません。
そして、短い区間ですが滝沢林道に乗り入れて、また登山道に戻ったら五合目「佐藤小屋」まではもうすぐの距離となります。本格的な登り道もここまでとなるので、気合い入れて登り詰めてしまいましょう。
五合目「佐藤小屋」から富士スバルライン五合目までの間は、展望の道です。
富士山山頂は辛うじて先っちょが見える程度ですが、下界に目を向けると富士五湖と周辺の山々の陽数を楽しむことができます。
途中に六合目に登るための分岐が出てきますが、9月以降冬季期間は黄色い板でしっかりと閉鎖されていて登れませんので、諦めて富士スバルライン五合目方面へ進みましょう。
富士スバルライン五合目は、通年通してマイカーや路線バスで登ってくることができるため相変わらずの多くの観光客で賑わっています。御庭へ向かう「御中道」の入口は、路線バス停留所を通り過ぎてすぐの場所にあります。乗り入れてくる自家用車や路線バスに注意しつつ進みましょう。
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富士スバルライン五合目〜 御庭
「御中道」に入ると、暫くは木々の中を進むことになりますが20分ほど歩けば、今回のルートで一番の好展望の楽しめる区間に入ります。
至近で見る赤茶けた富士山頂や荒々しい火砕流、眼下に広がる富士五湖や周辺の山々への眺めなど、360度の展望が楽しめます。
注意点としては、麓から噴き上げてくる強風を直接浴びることになるので、防風対策をした上でスタートした方が良いという点ぐらいでしょうか。
御庭付近まで来ると、東屋とベンチが設置されているのが見えてきます。ここで暫し周囲を眺めつつ休憩入れるのも良いでしょう。
また、「奥庭」から「大沢崩れ」まで遊歩道自体は伸びていますが、通行を禁止する案内が出ています。見落として先に進んでしまわないように注意しましょう。
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御庭~奥御庭荘~船津口三合目
「御庭」まで来たら、来た道を引き返して富士スバルライン五合目から路線バスで下山というのがセオリーのようですが、今回は「奥庭」へ降り、船津口登山ルートを辿って下山してみることにしました。
奥庭バス停までは、段差の大きい階段が続きます。
奥庭バス停を通過した後、奥庭荘までの道程も硬い石畳の下り坂となっているので、膝へ負担が行かないようにゆっくりめに降りると良いです。
奥庭荘からは、片道10分ほどの距離に展望台があります。天子山地を見通せる良い眺めが期待できますので、時間に余裕があれば寄り道してみるとよいでしょう。
奥庭荘から下は、ガチな登山道です。あまり整備はされていないようで、ところどころ倒木で遮られているところもあります。周囲を根気よく探せば迂回路を示すテープが見つかると思いますので、周囲に注意を向けつつ降りましょう。
三合目まで到着すると、広場が広がっています。
周囲を木々に囲まれてしまっているので展望が期待できないのは残念なところですが、ここから、バス停のある冨士スバルライン三合目への分岐があります。
ここのバス停を最後に、下山方面は「環境科学研究所入口」までバス停がありませんので、2時間以上は降下する必要があります。
加えて、船津口の三合目から二合目までの山道は多数の倒木で荒れ放題。一般人には歩行困難な区間となっています。(2021年9月時点)
これらを考慮して、三合目からはバスで下山してしまうことをおすすめします。
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船津口三合目~ 富士スバルライン一合目
今回は、現地状況が判っていなかったこともあって三合目以降も船津口ルートを降っていくこととしました。
最初こそ、広くてなだらかな道が続き、これは駆け下りて時間短縮できるかなと期待しましたが、少しすると倒木だらけで普通に歩くことのできない山道だったことが判ってきます。
この倒木達、単体の太さもさることながら集中して折り重なって倒れている箇所が連続で続いており、突破が非常に困難です。
ほぼすべて枝付きのまま放置されており、倒木の下を潜り抜けられるスペースがとても小さいのが困難に拍車をかけます。
そこで倒木をよじ登って突破を試みますが、自分の背丈以上に折り重なった倒木には危なくて取り付けず、登山道を大きく外れて迂回するように進んでいくようになりました。
そして、これを何度か繰り返していくうちに、現在位置や進んでいる方向に不安を感じる時間が長くなっていき、精神的にも疲弊してきました。
このまま無駄に蛇行しながら進んでいくと、日が暮れた後も倒木と悪戦苦闘するはめになりそうだったので、足元が暗くても安定して降っていける車道に出てしまおうと判断。強引に富士スバルラインまで抜けてしまい、そちらから下山することとしました。
この判断が功を奏したのか、以降はスムーズに距離を稼げて停滞することなく一合目を通過、そのまま降っていこうとしたところで、一台のバンがハザードを出して横付けしてきます。
車内からお母さんが降りてきて、同乗していくことを勧めてくださり、そのまま河口湖までピックアップいただきました。
実は、この日奥庭の展望台で置きっぱなしのバックを見つけ、奥庭荘に届けるといったことがありました。そのときに対応してくれたスタッフの方々の車だったようで、服やザックの色が印象に残っていて声をかけてくださったとのことでした。
山中では目立つ服装が良いと言われますが、こんなところでも活きてくるのかと改めて勉強になった一日でした。
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まとめ
富士御中道の様子でした。
今回登りに使った吉田口ルート、散策に歩いた御中道、ともにしっかりと整備されていて、通行に不安のある箇所はありません。(船津口ルートは別ですが…)
富士スバルライン五合目ならば、通年路線バスが通っているので、それぞれの区間を別々に区切って楽しむプランも悪くないと思います。
これから10月、11月と紅葉の映える時期に入っていきますので、天候の良い日を狙って、一度、遊びに出向いてみて下さいね。
それではここまでお読みくださり、ありがとうございます。
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